お役立ち記事
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2024.05.07
質の高い製品を製造、供給するため、品質管理と品質保証が重視されています。
どちらも製品のクオリティを守る役割を担いますが、異なるのはそれぞれの視点。両者の違いをきちんと理解して活用できれば、さらなる品質向上が見込めるでしょう。
そこで今回は、品質管理と品質保証の違いについて詳しく解説します。製造業における品質向上に向けたよくある課題と対策についても解説するので、品質改善に悩む企業様はぜひ参考にしてみてください。
目次
まずは、品質管理とは何か詳しく確認していきましょう。
品質管理は、製品の品質に問題がないか検証、保証する取り組みや仕組みを指す言葉です。Quality Controlを略してQCと称されることもあります。品質管理の大きな目的は、製造時に不良品や不適合品を出さないこと、そして品質のばらつきを防止して一定の水準を維持することです。つまり、出荷する製品が品質基準を満たしているか確認し、品質を担保する役割を担います。
用いられる品質基準は製品によっても異なりますが、品質マネジメントに関する国際規約のISO9000シリーズなどが代表的です。どの品質基準を用いるかを決めるのも、品質管理の役目です。
製品が一定の水準で維持できないと、クレームや売り上げ低下の原因になることもあります。最悪の場合、企業の信頼低下につながるリスクもあるため、製造業にとって品質管理の重要性は高いでしょう。日本のものづくりが世界的に高い評価を得ているのも、品質管理を重視してきたからこそです。
品質管理が対応するのは、製造工程から出荷確認までの範囲です。よって、製品を作って出荷するまでの工程を管理するのが一般的。
品質管理は、主に工程管理と品質検証、品質改善の3つで構成されています。
上記の業務を通して、いつでも正常な状態で製品作りに従事できる工程にしておくことが、品質管理の役目です。また、品質管理の場合、製品の品質基準に対して責任を負うことも理解しておきましょう。
品質管理について理解できたら、続いて品質保証についてチェックしていきましょう。
品質保証とは、製品の質を保証するための管理・改善を行う取り組みのこと。Quality Assuranceの頭文字をとってQAと称されることもあります。品質保証の目的は、消費者の安心や満足を保証すること。そのために、品質を分析・評価したり消費者の対応をしたりする役割を担います。アフターフォローなど納品したあとの製品に関わる対応をするのも品質保証の役割です。
製品の品質を保つことはもちろん、消費者の窓口として届いた意見をもとに品質改善などを行い、満足できる品質を確保することもあります。製品にクレームがあった場合に対応を行うのも、品質保証の役目です。品質保証が中心となり、製造工程にトラブルはなかったか、品質に問題はなかったかなどの原因究明や顧客への定期的な経過報告といった対応にあたります。
品質保証の業務範囲は、製品の企画から納入・アフターサービスまでを含めたすべての工程。品質管理と比べると、長い視点で製品の品質保持に携わるという点が特徴です。品質を保証するための法律や品質基準を把握するのはもちろん、場合によっては原材料の質を分析したり、開発した製品の評価をしたりと、業務の幅も広く仕事内容は多岐にわたります。
品質管理も品質保証も、消費者によりよい製品を提供するための、縁の下の力持ちとして製造業を支える重要な役割を担います。品質管理と品質保証の違いは、製品に対する視点です。品質管理は作り手側の視点であるのに対し、品質保証は消費者側の視点で製品を見る必要があります。というのも品質基準をクリアした製品なら必ず満足度の高い製品かというと必ずしもイコールではないからです。
視点に違いはあるものの、どちらも同じ製品の質に関わる重要な業務。作り手側の視点と消費者側の視点どちらかが欠けても、質の高い製品につながらないでしょう。例えば、クレームがあったときは対応する品質保証の部門だけでなく、品質管理の担当者の視点から改善方法を検討すると、違った発見があるかもしれません。
製造過程の改善まで視野に入れる品質保証と品質管理を別のものとするのではなく、一体感を持って取り組むことができれば、品質向上への相乗的な効果が期待できます。品質管理と品質保証が密に連携できるような組織作りが、製品の品質向上のカギになるでしょう。
品質保証と品質管理はどちらも、製品の質を高めて消費者との信頼性を構築し、今後の成長につなげる重要な役割を担います。しかし、品質保証と品質管理を設けていない会社や、専任者がいない会社もあるよう。その背景としては、以下のような理由が考えられるでしょう。
品質保証と品質管理は、どちらも製造業にとって重要なポジションです。しかし、国内製造業は人手不足が続いており、従業員の高齢化も進んでいるという現状があります。人材が不足していると現場で製造に携わる従業員の負担が大きくなり、品質保証と品質管理に割けるリソースがない会社も少なくないようです。
さらに、人材不足により管理が不十分になり、品質の低下を招くといった懸念もあります。リソースを増やし品質向上に向けた対策ができるよう、まずは人材不足をどのように解消していくか検討しなければなりません。
熟練技術者による業務の属人化も問題視されています。業務の属人化とは、業務の詳しい手順や状況が一部の従業員にしかわからない状態になっていること。数値化や具体化がしづらいノウハウは引き継ぎが難しいという側面があり、若い世代に技術継承しきれていないこともあります。
熟練技術者が抜けたときに対応できない場合、品質が落ちるなどのトラブルに発展する可能性もあるでしょう。誰でもできるようマニュアルやフローを作成する、業務プロセスを標準化するなど、できるだけ早く対策を講じる必要があるでしょう。
生産管理で重要となるのは、全体の状況をきちんと把握することです。なかには社内のルーティンをきちんと把握している管理者もいますが、担当者が変わると製造工程がはっきりわからなくなる懸念もあります。従業員数の少ない中小企業など、生産管理体制がきちんと確立されていないケースもあるかもしれません。
生産管理体制がきちんと確立されていないと、トラブルが発生した際に原因究明が困難になる、部署間の情報共有がしづらいなどの問題が生じる可能性があります。質を高める方法を検討しようにも、現場の状況を把握するだけでも労力がかかり、改善のための行動になかなか駒が進められないでしょう。
製造業では、手順書や検査表など数多くの書類を取り扱っているケースが多いよう。デジタル化されているものもありますが、従来のままの流れで紙やエクセルを用いて管理しているケースも少なくないでしょう。
エクセルは汎用性の高いソフトウェアですが、仕様変更に対応しづらい、データ共有に手間がかかるなど、管理工数が増えるというデメリットがあります。紙媒体の書類はデータをすぐに探し出せるよう整理する必要があることに加え、どんどん増えて収納場所の確保に困ることもあるでしょう。データを台帳などに打ち込む場合は、手間がかかるうえ、人為的なミスが発生するリスクも懸念されます。
製品の品質向上を目指すためには、業務のあり方を検討し直す必要があるでしょう。どのような方法があるのか、詳しく確認していきましょう。
品質向上を目指すには、まず自社の課題を整理することから始めましょう。品質向上に向けた取り組みが実施困難な理由は人材不足によるのか、虚弱な生産管理体制によるのか、課題はそれぞれ異なるはずです。ひとつひとつの生産プロセスを可視化したうえで、現状の問題点を洗い出し、最終的な目標を設定します。
目標は数値化することでより具体的になります。いつまでにどのくらい向上させるのかという点まで決めておきましょう。製造プロセスに直接携わる現場の声がヒントになるケースも多いため、意見を募ってみるといいかもしれません。
担当者により手順に微妙な違いがある、効率的な方法を共有する体制がないなどといった場合には、業務標準化を図るのも品質向上につながるひとつの方法です。業務標準化とは、業務の手順や評価方法を統一して、共通認識とすること。業務標準化ができると担当者による差がなくなり、品質の安定につながります。
手順の無駄があった場合には新しい方法を検討し共有するという風土が整えば、業務の属人化が生じにくくなり、引き継ぎもスムーズになるでしょう。
製造業でITシステムを導入してデジタル化を進め、業務の効率化を図るのもいいでしょう。例えば、これまで紙やエクセルで管理していた情報をデジタル化すれば、欲しい情報をすぐに取り出すことができ、工程ごとの情報も共有しやすくなります。熟練技術者の技術をデータ化することで、ノウハウの継承に役立てるのも属人化を解消するひとつの方法です。
ITシステムの活用により業務にかける時間を短縮できれば、これまでよりも少ない人員で対応でき、人材不足の問題を解消することにもつながるでしょう。これらの方法により品質保証と品質管理に十分なリソースを確保することが、製品の品質向上に向けた大きな前進になるはずです。
当社では、国際基準の品質管理にも活用可能なクラウドサービス「MENTENA(メンテナ)」を提供しています。
株式会社新城製作所は、自動車部品を製造する老舗の企業で、品質管理の国際基準であるIATF 16949を取得しています。同社は、この基準に準拠した厳密な保全管理が求められるなか、「MENTENA」を導入し、保全データの管理体制を強化しました。
従来、紙やエクセルで行っていた複数拠点のデータ管理は、情報の分散や計画保全の困難さが課題でした。MENTENA導入後はデータが一元化され、品質管理や突発故障の対応が効率化されました。
経営層も設備の状態をリアルタイムで把握できるようになり、IATF 16949が求める高い品質基準を維持しつつ、計画的な設備投資や保全が可能になりました。
製品の質の追求は、顧客の信頼・会社の利益にとって欠かせません。品質保証と品質管理、両方の視点から製品を管理することで、さらなる品質向上につなげることができるでしょう。そのためにもまず、生産工程の効率化を進める必要があります。
MENTENAは、クラウドにより現場作業の効率化を目指す設備保全システム。進捗状況の可視化、データ管理の一元化などにより、品質管理の業務を効率化することができるでしょう。無駄のない品質管理がしたいと考えている企業さまは、ぜひお気軽にお問い合わせください。
執筆者
MENTENA編集部
製造業向けの業務効率化・業務改善に役立つコラムやセミナー、および有益な資料を通じて、実践的な情報を提供しています。最新のツールの使い方や業界の情報・トレンドを継続的に発信することで、製造業の皆様にとって信頼できる情報源となることを目指しています。
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