設備管理

公開日:2025.06.21

更新日:2025.06.30

予防保全はなぜ必要?システム活用による進め方と導入効果を解説

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設備のトラブルを未然に防ぐ「予防保全」は、製造現場の安定稼働やコスト削減に直結する重要な取り組みです。従来の事後保全では対応が遅れ、生産性の低下や重大な損失につながるリスクもあります。

この記事では、予防保全の基本や導入メリット、代表的な方式、そしてシステムの導入により予防保全に取り組んでいる企業の事例まで、実践に役立つ情報をわかりやすく紹介します。

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目次

予防保全とは

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予防保全(PM:Preventive Maintenance)とは、設備が故障する前に点検や整備を行い、トラブルを未然に防ぐことを目的とした保全手法です。生産ラインの停止や品質不良といった重大な問題を回避するために、多くの製造現場で導入が進んでいます。

 

予防保全には多くの方式があり、それぞれ特徴が異なるため、設備の重要度や使用頻度、故障リスクに応じて保全方式を組み合わせ、適切な手法を選ぶことが重要です。

 

適切な予防保全の実施は、生産の安定化・コスト削減・設備の長寿命化にもつながります。

なぜ今、予防保全が注目されるのか

予防保全 vs 事後保全比較マトリクス

これまで多くの現場では、設備が故障してから対応する「事後保全」が主流でした。しかし、故障による突発的なライン停止や修理費の増大など、想定外のコストとリスクが大きな課題となっていました。

 

また、従来の保全は熟練作業者の経験や勘に頼る側面が強く、人材不足や技術の伝承が難しいという課題が現場で深刻化しています。実際、当社の独自調査によれば、現場の保全従事者のうち60歳以上が約2割を占め、技術伝承に5年以上かかると考える声も4割を超えています。

 

こうした背景から、近年は「壊れる前に直す」予防保全の重要性が高まっており、データや仕組みによって保全を行う体制づくりが急務となっているのです。

 

(出典)

八千代ソリューションズ株式会社 | 【調査リリース】製造業界を揺るがす経済損失問題「2025年の崖」の業界内認知度は4割以下 保全技術の伝承が危機に瀕していることが明らかに

予防保全の7つの方式と特徴

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予防保全にはさまざまなアプローチがあり、設備の重要度や故障リスク、使用状況に応じて適切な方式を選ぶことが重要です。ここでは、代表的な7つの方式とその特徴を解説します。

予防保全7方式アイコン付きフローチャート

時間基準保全:TBM(Time Based Maintenance)

TBMは、あらかじめ決められた時間間隔に基づいて、定期的に点検や部品交換を行う保全方式です。例えば「3カ月ごとに交換」「1000時間運転ごとに点検」など、スケジュールが固定されているのが特徴です。

 

想定される劣化や故障のタイミングを前提に作業を行うため、一定の予防効果が見込めます。その反面、設備の状態に関係なくメンテナンスを行うことから、コストや工数が無駄になる可能性もあります。

 

導入に際しては、過去の故障傾向やメーカーの推奨時期などを参考に、最適な周期設定が必要です。

状態基準保全:CBM(Condition Based Maintenance)

CBMは、設備の状態を監視・点検し、異常が見られた場合に限ってメンテナンスを行う方式です。振動・温度・音・電流値などをセンサーや点検機器で計測し、データをもとに部品の劣化や故障兆候を判断します。

 

必要なときだけ対応するため、過剰な点検や部品交換を避けられ、保全コストの最適化が可能です。ただし、正確な判断にはセンサーや解析の仕組みが必要であり、導入初期には体制構築にコストがかかる場合もあります。

利用基準保全:UBM(Usage-based Maintenance)

UBMは、設備の稼働時間や使用回数を基準にして点検・整備を行う方式です。使用状況に応じて保全時期を調整できるため、TBMよりも柔軟で合理的なメンテナンスが可能です。

予知保全:PdM(Predictive Maintenance)

PdMは、センサーやIoT、AIなどを活用して、故障の兆候をデータで予測し、必要なタイミングで保全を行う方式です。突発停止を防ぎつつ、保全コストも最小限に抑えられる手法として注目されています。

故障発見保全 (FFM:Failure Finding Maintenance)

FFMは、普段は使われない装置(非常用設備など)の不具合を定期的な点検で発見する保全方式です。実際に使う機会が少ない装置でも、確実に作動させるための仕組みとして有効です。

リスク基準保全:RBI(Risk Based Maintenance)

RBIは、設備の故障リスクや重要度に応じて、保全の優先順位や対応頻度を決定する方式です。限られたリソースを高リスク設備に集中させ、効率的な保全を実現します。

信頼性中心保全:RCM(Reliability Centered Maintenance)

RCMは、設備の故障履歴や信頼性データをもとに、最適な保全方式を組み合わせて適用する手法です。コストと効果のバランスを取りながら、保全全体を最適化するアプローチとして活用されます。

予防保全のメリット

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予防保全は、設備トラブルの未然防止を目的とするだけでなく、生産性の向上、品質の安定、設備コストの最適化、現場負担の軽減といった幅広い効果をもたらします。

 

ここでは、代表的なメリットを紹介します。

ダウンタイムの削減

予防保全を導入する最大の利点の1つが、突発的な設備トラブルによるライン停止のリスクを低減できることです。

 

故障が発生してから対応する事後保全では、緊急対応や修理費だけでなく、製造の遅れによる納期遅延や顧客への影響など、想定外の損失が生じます。実際、製造業において突発停止による年間の損失が1,892万円にものぼるという調査データもあります。

 

定期的な点検・整備を通じて異常の兆候を早期に察知し、あらかじめ対応することで、安定した稼働環境を維持できます。

 

(出典)

八千代ソリューションズ株式会社 | 【調査リリース】製造業の根幹「安定供給」を脅かす突発停止、年1,892万円の損失

製品品質の維持

設備不調が製品のばらつきや不良品発生につながることは少なくありません。特に精密機器や連続生産ラインでは、微細な劣化が品質に直結するケースもあります。

 

予防保全によって設備の状態を一定に保てれば、製品の品質のブレや歩留まり低下を防ぎ、安定した生産体制を実現できます。また、トレーサビリティ強化や品質保証体制の強化に貢献するのもメリットです。

設備寿命の延長

部品の摩耗や潤滑不良などを早期に発見し、適切なタイミングで交換や整備を行うことは、設備や機器の劣化を最小限に抑えることにもつながります。

 

局所的な不具合が全体へ波及するのを防ぎ、重大な損傷や構造的劣化を回避できるため、結果として設備全体の使用年数を延ばせます。更新投資や突発的な修理費を抑制できる点からも、予防保全は企業全体の資産管理という観点で、長期的な設備価値の維持に効果的といえるでしょう。

保守部品の適正管理

予防保全を導入すると、設備の点検・交換スケジュールが計画的になるため、必要な部品を必要な時期に合わせて準備することが可能になります。

 

これにより、過剰な在庫保管や急な手配によるコスト増を防ぎ、保守部品の調達・管理の効率化が図れるのもポイントです。在庫管理システムと連携すれば、購買業務の自動化にもつながります。

働き方の改善

事後保全では、設備トラブルが起きるたびに現場が突発対応を強いられ、作業者の心理的・時間的負担が大きくなりがちです。

 

予防保全により計画的なメンテナンスが可能になると、現場の業務が平準化され、業務に追われるストレスの軽減につながります。保全作業の属人化も解消しやすく、技術伝承や標準化の土台づくりに貢献するのもメリットです。

予防保全のデメリット

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予防保全は、設備の安定稼働や品質維持に大きな効果を発揮する一方で、導入や運用において注意すべき課題もあります。

 

ここでは、予防保全において、現場で直面しがちなデメリットを紹介します。

突発的な故障やトラブルは防げない

予防保全は故障を未然に防ぐことを目的としていますが、すべてのトラブルを完全に排除できるわけではありません。突発的な故障には、部品の初期不良、外部環境の影響、人為的ミスなど、予測困難な要因も含まれており、予防保全だけでは対応しきれないケースもあるためです。

 

また、予防保全が整っている現場でも、対応のタイミングや判断を誤ると、かえって生産への影響を大きくしてしまうリスクがあります。そのため、定期点検とともに、異常の早期発見・緊急対応の体制もあわせて構築することが重要です。

オーバーメンテナンスのリスク

予防保全をTBM(時間基準保全)を中心に運用している場合、実際には劣化していない部品や設備に対しても、定期的な交換や整備が行われることがあります。その場合、資源の無駄や保全作業の非効率が発生し、コストを押し上げる可能性があります。

 

特に、保守部品が高額な設備や、作業に大きな手間を要する装置では、過剰なメンテナンスがかえってコスト負担を重くすることになりかねません。過去データや状態監視の仕組みを活用し、保全対象ごとにCBMやPdMもあわせて検討することが重要です。

保全コストの増加

予防保全はトラブルのリスクを減らす反面、点検・整備にかかるコストは確実に発生するという現実があります。定期的な点検作業、部品の交換、記録管理などの業務が増えることで、保全部門の人件費や部材コストがかさむ傾向にあります。

 

特に多品種・多工程の現場では、保全対象が膨大になるため、予防保全の対象範囲や頻度を適切に管理しないと、費用対効果が下がることも。事前にコストシミュレーションを行い、必要な保全の優先順位付けが求められます。

工数・人手が必要

予防保全の運用には、計画立案・実施・記録の各段階で相応の工数が必要です。点検や整備は本来の生産業務とは別の作業であるため、人的リソースが限られている現場では、日常業務との両立が難しくなることもあるでしょう。

 

また、実際の点検作業は現場ごとに手順や条件が異なり、効率化しづらい業務である点も負担が重くなる要因です。人員不足が深刻な現場では、予防保全の実施そのものが困難になるケースもあり、業務の標準化や外部支援の活用も視野に入れる必要があります。

属人化の懸念

予防保全を実施するなかで、特定の担当者が点検手順や判断基準を属人的に運用している状態になると、情報の共有・引き継ぎが難しくなります。作業の可視化が不十分なまま進めると、担当者の異動や退職により、保全ノウハウが失われてしまうリスクがあるのも問題です。

 

また、属人化が進むと、現場間での保全品質にばらつきが生じることも少なくありません。これを防ぐには、作業手順や記録のデジタル化、教育体制の整備など、業務の仕組み化を検討する必要があるでしょう。

生産スケジュールへの影響

予防保全では、点検や部品交換のために設備を一時的に停止しなければならないこともあります。しかし、生産が逼迫している時期や、交代制の現場では、メンテナンスによるライン停止が生産スケジュールに多大な影響を与えかねません。

 

それを避けるために、保全を実施したくても「今は止められない」という判断が優先されることもあるようです。そうすると、本来の保全タイミングを逃してしまい、予防保全が機能しなくなってしまいます。予防保全は、生産計画と連携した保全スケジューリングや、短時間で終えられる点検体制の工夫が求められます。

予防保全はどう実現する?システム導入のすすめ

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予防保全を定着させるには、現場での運用と情報管理の両面から体制を整える必要があります。ここでは、具体的な運用方法と、システム導入を検討すべき理由を紹介します。

予防保全フロービフォー&アフター図

点検履歴の蓄積とPDCA運用が第一歩

予防保全は、「定期的に点検するだけ」では不十分です。まずは点検記録を正確に残し、それを分析・改善に活かす運用体制をつくることが重要です。

 

すべての設備に対応しようとすると負担が大きいため、まずは故障リスクが高い機器や、生産影響の大きい設備から優先的に取り組むのが現実的です。点検内容や頻度は固定化せず、履歴をもとにPDCAを回して改善する姿勢が求められます。

システムで効率と標準化を検討しよう

実際に予防保全を実施する際、記録を紙やエクセルで管理すると、情報の分散、入力ミス、履歴の見落としなどが起きやすく、データ活用が困難になります。また、担当者しかわからない形式になりがちで、属人化の原因にもなることも少なくありません。

 

そのようなときにおすすめなのが、予防保全を実施できるシステムの導入です。システムを導入すれば、点検スケジュールの自動通知、履歴の一元管理、異常の見える化などが実現できることがポイントです。

 

情報の共有や業務の標準化が進み、予防保全が仕組みとして機能する状態を作りやすくなるので、検討してみることをおすすめします。

システムを使った予防保全の実施方法

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予防保全の効果を定着させるには、仕組みとして機能するシステムの活用が不可欠です。ここでは、システムを使った具体的な実施方法を見ていきましょう。

予防保全システム導入のフロー

Step 1. 保全対象と基準をデータで設計する

まずは、どの設備・部品を対象とするか、どのような点検基準で管理するかを明確に定めることが第一歩です。システムを活用すれば、設備ごとの使用年数・稼働時間・過去の故障履歴といった情報を一元管理でき、数値根拠に基づいた点検基準の設計が可能になります。

 

さらに重要な設備にはセンサーを設置し、温度・振動・電流などのデータを常時モニタリングすれば、異常の兆しや劣化傾向を把握し、必要なときに必要な対応をとる保全体制の構築が可能です。これにより、無駄な点検や部品交換を減らしつつ、設備トラブルのリスクを最小限に抑える運用が可能になります。

Step 2. 現場が使いやすいデジタル点検フローを整える

次に、現場での点検作業をシステム上に標準化・テンプレート化することで、誰でも迷わず点検を実施できる状態をつくりましょう。タブレットなどで点検項目を確認し、その場で記録すれば、紙やExcelにありがちな記入漏れや後回しがなくなります。写真や動画を用いると、状況の把握も容易です。

 

点検結果はリアルタイムでクラウドに集約され、管理者や他拠点とも即時共有できるのもポイントです。属人化を防ぎ、保全の透明性を高める効果も期待できます。

Step 3. 記録をAIで分析し、改善につなげる

蓄積された点検記録は、今後の予防保全計画にも役立ちます。例えば、「過去に故障が多かった設備に共通する状態変化」や「異常値が現れる前のデータの変動傾向」などをAIが学習すれば、設備のダウンタイムを最小限に抑え、コスト削減と業務効率化につながるでしょう。

 

また、点検頻度が過剰な箇所やムダな保守作業も、システム上の記録から可視化できるため、保全計画の見直しやコスト最適化にも役立ちます。データを活かして改善のPDCAを回すことこそ、予防保全DXの醍醐味です。

予防保全でシステムを導入した成功事例

「システムを使った予防保全の実施方法」をイメージできる画像

ここでは、予防保全もできる設備保全システム「MENTENA(メンテナ)」の導入により、現場の課題を解決した企業の事例を紹介します。

熊本大同フーズ株式会社の事例(食品業)

新設工場で予防保全体制をゼロから構築すべくMENTENAを導入した事例です。設備ごとの保全計画が明確化され、適切なメンテナンス時期・故障箇所・必要予算を可視化できるようになりました。

 

記録のデジタル化によりISO22000の監査もペーパーレスで通過。予防保全を日常業務に定着させることで、現場の安全確保と製品の品質担保に直結する運用体制を実現しています。

 

この事例をもっと詳しく☟
新設工場で予防保全体制をゼロから構築。理想とする設備保全体制が構築でき、ISO22000の監査にペーパーレスで通過。

株式会社イトーヨーギョーの事例(製造業)

海外製の大型設備を有し、これまで事後保全中心だった同社では、予防保全への転換を目的にMENTENAを導入。保全記録のばらつきが解消され、アラート通知により作業漏れが防止される体制が整いました。

 

分析ツールにより保全計画や予算立案も効率化され、メンテナンスの所要時間が全体として短縮。予防保全の仕組み化によって、業務効率と生産性の両立に成功しています。

 

この事例をもっと詳しく☟
事後保全から最適な予防保全の実現へ。本社と工場を結ぶ設備管理のプラットフォームとしてMENTENAを導入。

まとめ

設備管理クラウドサービスMENTENA

予防保全は、設備の故障を未然に防ぎ、生産性や品質の維持に貢献する重要な考え方です。しかし、計画的な保全を現場に定着させるには、情報の記録や共有、履歴管理といった作業を正確かつ効率的に行える仕組みが欠かせません。

 

そこで役立つのが、予防保全に対応した設備保全システムの導入です。属人化しやすい保全業務を標準化し、トラブルの兆候を見逃さずに対応する体制をつくることで、安定稼働と業務効率の両立が可能になります。

 

MENTENA」では、導入から運用までしっかりサポートし、現場の課題に即した保全体制づくりをお手伝いしています。持続的な改善のためにも、ぜひ導入を検討してみてください。

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MENTENA編集部

執筆者

MENTENA編集部

製造業向けの業務効率化・業務改善に役立つコラムやセミナー、および有益な資料を通じて、実践的な情報を提供しています。最新のツールの使い方や業界の情報・トレンドを継続的に発信することで、製造業の皆様にとって信頼できる情報源となることを目指しています。

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