設備管理

2024.08.26

製造業における人材育成の重要ポイント8つと先進事例5選を紹介!

MENTENAへのお問い合わせ

製造業において、顕著化しているのが人手不足です。現場にとって必要な人数が不足すれば、経営が立ち行かなくなることも。そんな状況を解消するために、人材育成に力を入れることが重要です。

今回は、なぜ人材育成に重点を置くべきなのか、その必要性と効率的な人材育成を行うためのポイントを8つご紹介します。また、人材育成がうまくいかない理由や人材育成に関する先進事例も5つまとめましたので、現場の担い手が不足している企業さまは参考にしてください。

MENTENAへのお問い合わせ

目次

製造業が抱える課題は人手不足!その理由は?

「製造業が抱える課題は人手不足!その理由は?」をイメージできる画像

製造業において深刻な問題の1つである人手不足。なぜ人手不足に陥っているのか、その理由から解説します。

国内における労働力人口の減少

昨今の日本国内では、少子高齢化が進んでいることで、労働力人口が減少しています。つまり、製造業に関わらず、どの業種でも人材不足に陥ることが懸念されています。

 

なかでも、製造業は人がなかなか集まりにくく、人口が少ない地方に多い傾向があることも、人手不足に影響していると考えられます。東京のように人口が密集している場所に工場がないケースも多いため、働き手の確保が難しいのです。

 

他にも、もともと国外に拠点を置いていた企業が、海外メーカーとの価格競争に巻き込まれて技術者の待遇向上が難しくなり、国内回帰を図るケースも出てきています。その結果、国内にある製造業の会社が増え、人材の取り合いとなることで人手不足が発生。求人を出しても、思うように人が集まらない現状もあるようです。

ワークスタイルの変化と後継者不足

日本では、技術伝承する際に「やって見せる」「言って聞かせる」「やらせてみる」というやり方を軸にしたOJTという教育方法が一般的です。即戦力として動ける人材を育成する際に向いている教育方法ですが、体系的な知識を教える場合には適切な指導方法ではないことや、教育する側のばらつきなどの問題もつきまといます。

 

また、昨今では働き方の自由度が増し、1つの企業に長くとどまって働くワークスタイルが定番ではなくなりつつあります。

そのため、人材流出の機会が多く、せっかく育成しても他の企業に転職してしまい、うまく後継者となる人材を育成できないことも人手不足の原因です。

「3K」と呼ばれる負のイメージ

製造業では「汚い」「危険」「きつい」といった「3K」と呼ばれる負のイメージが定着しています。

 

例えば、生産ラインを止めないために24時間稼働することで長時間労働になる、油や化学薬品によるにおいがきつい、危険な作業工程があるといったことが3Kのイメージとして挙げられます。そのため、もっと快適に働くことができる、好条件の職種を探す人が多いことで、製造業全体で人手不足に陥っているとも言われています。

 

関連記事:
>>工場/製造業が人手不足になる原因は?辞める理由や対策/解決策を解説

製造業での人材育成が重要である理由

「製造業での人材育成が重要である理由」をイメージできる画像

では、なぜ製造業において人材育成が重要視されているのでしょうか?その理由について詳しく解説しましょう。

会社の競争力を低下させないため

製造業で若手の人材が確保できない状況が続くと、ある程度経験がある中堅クラスの技術者が、新人が担当する業務をこなさなくてはなりません。

 

すると、新しい価値を創造する作業や高度な判断が必要な仕事に専念できず、現場全体の業務が非効率的になってしまいます。

 

これによって技術者自身の成長も阻害され、会社が持つ競争力も徐々に低下してしまうのです。会社の競争力を損なわないために、人材育成に力を入れなければなりません。

利益と給料を低下させないため

クライアントから受注した製品を製造する際、技術者が不足していると、自社で部品の生産や組み立てを一貫して請け負えない可能性もあります。

 

受注を断れば今後の関係に響くことが考えられるため、人手不足の状態で無理なオーダーを受けてしまうケースも少なくありません。社内で完遂できなかった作業工程を外注せざるを得ない状況となれば、コストがかさみ、利益がなかなか出ないといった悪循環が発生してしまいます。

 

十分な利益が出なければ、会社として経営がうまくいかなくなることはもちろん、技術者の待遇にも悪影響を及ぼすことが考えられるため、人材育成を強化すべきなのです。

生産ラインの維持が不可能にならないようにするため

人手が足りなければ、工場の生産ラインの維持が難しくなります。

 

特に、中小企業では、正社員の確保がなかなか進まず、ギリギリの人員で現場を賄っている場合も。

 

なかには、受注は順調なのにも関わらず、技術者不足の影響で生産ラインが維持できず、黒字倒産するパターンもあるようです。倒産という最悪のパターンを回避するためにも人材育成は重要といえます。

技術伝承に時間がかかるため

人材育成の重要性は、技術伝承が一朝一夕には進まず、計画的かつ継続的な取り組みが求められるという点にもあります。

 

例えば当社の独自調査によれば、製造業のなかでも後工程にあたる設備保全技術の伝承には5年以上必要」とする回答が全体の4割を超えており、この分野で技術伝承が短期間で完了するケースは少ないことがわかっています。

 

人材が不足するなか、技術伝承にかかる時間を十分に考慮できず熟練技術者が次々と退職してしまうと生産性の低下や設備の頻繁な故障、突発停止、品質の低下などを招きます。

製造業で人材育成がうまく進まないのはなぜ?

「製造業で人材育成がうまく進まないのはなぜ?」をイメージできる画像

ものづくり白書2024年版によると、製造業において能力開発や人材育成に問題を抱えている事業所の割合は2022年度で82.8%に達しており、全産業平均を上回る状況となっています。同白書のデータをもとにその理由を4つ解説します。

指導する人材の不足

製造業の人材育成において最も大きな課題は、「指導する人材が不足している」(61.8%)ことです。熟練技術者が高齢化し、次世代への技術伝承が求められる中、指導を担う人材が不足しているため、若手技術者の育成が進みづらい状況にあります。

 

さらに、業務の属人化が進んでいる企業も多く、特定の技術者しか対応できない業務が増えることで、スキルの標準化や効率的な育成が難しくなっています。

 

関連記事:
>>製造業における設備保全の属人化はどう防ぐ?起こりうる問題から解消のコツまで

人材育成のための時間不足

次に大きな課題として挙げられるのが、「人材育成を行う時間がない」(46.1%)ことです。生産性向上のために現場の業務が圧迫され、教育・研修に十分な時間を確保できない企業が多く存在します。

 

特に中小企業では、日々の業務をこなすだけで精一杯となり、計画的な人材育成に取り組む余裕がありません。

育成した人材の流出

また、「人材を育成しても辞めてしまう」(45.9%)ことも大きな課題です。企業が時間とコストをかけて育成した人材が定着せず、離職してしまうケースも多くあります。

 

これにより、育成に対する投資の効果が得られず、企業は常に新たな人材を一から育成しなければならない悪循環に陥っています。

人材確保の難しさ

さらに、「鍛えがいのある人材が集まらない」(33.4%)ことも指摘されています。

 

特に若年層の製造業離れが進み、企業が求めるスキルや特性を持つ人材を確保することが困難になっています。

 

加えて、製造業においては自己啓発を行う労働者の割合が他業種に比べて低い水準であるともいわれています。

 

関連記事:
>>若者の製造業離れが進むのはなぜ?原因と人材確保のための対策

 

(出典)
経済産業省 | 2024年版ものづくり白書 第2章第2節

製造業における人材育成を効果的に行うポイント8つ

「製造業における人材育成を効果的に行うポイント8つ」をイメージできる画像

ここからは、製造業における、人材育成を効果的に行うポイントを解説していきましょう。各ポイントをしっかり把握し、実践で活かしてみてください。

どのような人材を育成したいか明確化する

製造業の人材育成では、どのような人材を育てていきたいかを明確にすることからはじめます。現場での現実的な課題や将来のビジョンに基づいて、必要な人材を見極めましょう。

 

具体的には「品質管理とプロセス改善の知識」「デジタル化に関する技術」といった形で、詳細な項目を挙げます。項目を挙げることで、教えられる立場の技術者も目標がはっきりし、努力しやすい環境が整うのです。

職場環境をきちんと整える

人材育成を行う際には、技術者が安心して成長できるよりよい職場環境を整えることも重要なポイント。ここでいうよりよい職場環境とは、技術者同士の信頼を深めること。信頼関係が築ければ、知識や技術の伝承が順調になり、結果的に生産性の向上につながるはずです。

 

そこで実施したいのが、定期的なミーティングや面談。若手が意見や気になる点を自由に発言できる機会を設け、柔軟な体制を整えましょう。こういった若手からの意見に耳を傾けるだけでなく、定期的なフィードバックも大切です。働きやすさに加えて、若手社員の意見によって会社がよりよい方向へと進むきっかけになることもあります。

キャリアパスを可視化する

これから育成していく技術者に対して、キャリアパスを可視化しましょう。キャリアパスが明確になることで、将来への不安を軽減できます。

 

また、目に見える形で目標設定ができるため、効率的に技術や知識を習得することが可能です。

 

入社してから1年、3年、5年といったように、段階的に設定し、若手技術者が積極的に学べる環境を整えることが大切です。キャリアパスを明確化することは、多能工への挑戦や特定の機械操作など、技術者がどのように成長していけばよいのかを理解するのに役立ちます。

 

また、技術者が自身の成長を計画する際に、ある程度道筋を立てることができます。

一貫性のある教育体制を構築する

人材教育を行ううえで、属人化を排除した一貫性のある教育体制を整えましょう。属人化した状態で人材育成を行うと、教える側の力量の範囲でしか成長できず、指導する技術者によって、教育内容にばらつきが生じます。そこで、教育者用のマニュアルを作成し、誰が教えても差がない内容とすることで、分け隔てない人材教育ができるよう工夫しましょう。

 

また、工場内の技術進展や業界の動向に応じて、マニュアルを定期的に更新することも忘れてはいけません。

 

そして、技術を教える際には、それらがなぜ重要なのかも一緒に解説しながら指導を行います。作業背景や作業の意味が理解できれば、より腑に落ちた形で技術習得できるはずです。加えて、当事者としての意識が高まり、満足感やモチベーションアップにもつながるでしょう。

現場の指導力向上を図る

製造業では、OJTにのっとって人材育成を進めるのが一般的でした。しかしこれでは、教えるための技術や方法論が不足します。

 

また、現代社会の動向として、体系的で明確な指導を求める若者が増えてきていると言われているため、指導力の底上げも、人材育成において欠かせないポイントです。

 

具体的に実施すべきは、熟練技術者や管理職を対象にした指導方法やメンタリングスキル、コミュニケーション技術などを身につけるための研修です。ま

 

た、若手との対話により相互理解を深めるのも指導力向上に役立ちます。

個人成長の支援と継続的なスキル改善

人は、個々によって成長のスピードもさまざまです。そこで人材育成を行う際には、個々の成長に寄り添った支援を意識しましょう。具体的には、まず個別に目標を設定し、それを達成するためのトレーニングプログラムを用意します。こういった個別でのサポートは、技術者自身のモチベーションアップにつながるため、職場の雰囲気も良くなるはずです。

 

日々の積み重ねによる努力から立派な人材が育ったあとも、継続的なスキル改善を忘れてはいけません。製造業では、技術やニーズなどが日々変化します。これに沿ったスキルを常に身につけられるよう、定期的なトレーニングプログラム作成や最新技術の共有などを行いましょう。

デジタル技術活用の取り組みを強化する

近年、製造業においてもデジタル技術の活用は大きく進展しています。ものづくり白書2024年版によれば、デジタル技術の活用が進んでいる企業ほど、デジタル技術活用に向けた人材育成や人材確保に関しても取り組みが活発であるとの調査結果を公表しています。

 

人材育成に関連した主なデジタル技術活用の取り組みは以下の通りです。

 

  • 会社の指示による社外機関での研修・講習会への参加
  • 社内での研修・セミナーの実施
  • 会社からのデジタル技術の情報提供
  • 社内での自主的な勉強会などの奨励
  • デジタル技術関連業界との交流機会の提供

 

こうした取り組みによって、「作業負担の軽減や作業効率の改善」「開発・製造などのリードタイムの削減」、「品質の向上」、「在庫管理の効率化」などの効果を得ている企業も多くあり、特に従業員数300名以下の中小企業においては営業利益も伸びる傾向にあります。

 

(出典)
経済産業省 | 2024年版ものづくり白書 第2章第4節

人材採用にも配慮する

人材育成を促進するには、人材採用にも配慮しましょう。人手不足だからと、誰でも構わず採用していては、本当に必要な人材の確保ができません。企業がビジョンや使命を共有したうえで、誠実さや仕事に対する情熱、チームワーク力などに注目して面接を実施してみてください。

 

業務で必要な知識、技能、専門的技術などのハードスキルは数年あればある程度は身につきます。それ以外の人間性や学習意欲などのソフトスキルに着目して、社内でうまくやっていけるか、将来の後継者として育成できるかなど、ポテンシャルや伸びしろなども意識して採用しましょう。

【製造業】人材育成の先進事例5選

「【製造業】人材育成の先進事例5選」をイメージできる画像

ここまで見てきた通り、人材不足が課題となる製造業では、効果的な人材育成が求められています。そこで、中途採用者や高年齢者の活用、若手の定着、新技術を活かしたスキル向上など、5つの先進的な企業の取り組みを紹介します。

事例①株式会社一ノ坪製作所

奈良県香芝市に本社を構える株式会社一ノ坪製作所は、オフィス家具を一貫生産する企業です。即戦力の確保が難しいため、異業種からの中途採用者を対象に、研修制度を充実させています。初級・中級・上級とレベル別の研修を行い、社内外の学習機会を設けています。

 

また、経営勉強会を定期的に開催し、企業のビジョンを共有する機会も作っています。希望する研修に応じた部門への配置転換も行い、個々の成長を支援しています。

 

今後も、中途採用者の成長を促進し、企業と従業員の持続的な成長を目指していきます。

事例②株式会社加藤製作所

岐阜県中津川市の株式会社加藤製作所は、プレス板金部品を加工する老舗メーカーです。工場の安定稼働のため、地域の高年齢者を積極的に採用し、ものづくり未経験者にも研修を行っています。基礎研修では、安全管理や工具の使い方を学び、視覚的に理解しやすいマニュアルも用意しています。

 

また、高年齢者の能力を評価し、得意な分野で活躍できるよう適材適所の配置を行っています。

 

例えば、品質管理の経験がある人は検査部門へ、デジタル技術の知識がある人は生産管理部門へ配置しています。現在、従業員の半数以上が高年齢者となり、冷暖房設備の整備や作業環境のバリアフリー化も進めています。

 

今後も、若年者と高年齢者が共に活躍できる企業を目指していきます。

事例③株式会社江北ゴム製作所

東京都足立区の株式会社江北ゴム製作所は、ゴム製品を製造する企業です。以前は、従業員の高齢化と若手の定着率の低さが課題でしたが、「成長のPDCAサイクル」を導入し、人材育成の仕組みを整えました。従業員ごとに必要な能力をリスト化し、目標を設定しながらスキルの習得を支援しています。成長に応じて給与へ反映し、モチベーション向上につなげています。

 

また、意欲的な従業員には業務成果だけでなく、取り組む姿勢も評価することで、長期的な成長を促しています。こうした取り組みにより、若年層の定着率が向上し、製造現場の平均年齢は35歳まで若返りました。

 

今後も、時代の変化に対応した人材育成を進め、企業の持続的な成長を目指していきます。

事例④株式会社松永製作所

岐阜県養老町の株式会社松永製作所は、車椅子などの福祉用品を製造する企業です。従来は、暗黙知に頼る業務が多く、技術伝承と業務の効率化が課題となっていました。

 

そこで、VE(Value Engineering)を導入し、機能とコストを分析しながら業務改善を進めました。VE基礎講座を開催し、多職種チームで知識の言語化を進めることで、技術伝承を促しました。

 

例えば、救急用ストレッチャーの生産工程では、各メンバーが意見を出し合いながら改善を行いました。VEを活用した業務改善の成果は14件に上り、人材開発にも役立っています。

 

今後も、時代の変化に対応しながら、高い技術を活かしたものづくりを続けていきます。

事例⑤石川樹脂工業株式会社

石川県加賀市に本社を構える石川樹脂工業株式会社は、樹脂製の食器雑貨を製造・販売する企業です。人手不足と生産性向上のため、仕上げ工程にロボットを導入し、従業員のリ・スキリングを進めました。経営陣も自ら学び、従業員と共に技術習得を進めることで、社内でのスキル向上を促しました。

 

また、ECサイトを活用した販売拡大のため、デジタルマーケティングの知識を習得し、若手従業員が主体的に成長できる環境を整えました。こうした取り組みにより、売上は2016年から2023年にかけて1.5倍に増加しました。

 

今後も、新技術の導入と従業員のスキル向上を両立させ、企業の持続的成長を目指していきます。

 

(出典)
経済産業省 | 2024年版ものづくり白書 第2章第3節, 第4節

最後に

設備管理クラウドサービスMENTENA

人材不足に直面している製造業において、会社に必要な利益の確保や生産ラインの維持などを果たすために、より効率的な人材育成が欠かせません。

 

まずはどのような人材を育成したいか明確化し、これに沿ったマネジメントを構築、実施しましょう。また、指導者のスキル底上げやよりよい職場環境を整えることも、効率的な人材育成に役立ちます。ご紹介した8つのポイントや先進事例を参考に、自社に適した人材育成方法を確立させましょう。

 

人材育成に課題を抱えている企業さまはぜひクラウド型設備管理システム「MENTENA(メンテナ)」の活用もご検討ください。現場の点検記録や修理履歴が写真付きで一元管理が可能で、作業の標準化も図れるため、効率的な人材育成にもお役立ていただけます。

MENTENAへのお問い合わせ
MENTENA編集部

執筆者

MENTENA編集部

製造業向けの業務効率化・業務改善に役立つコラムやセミナー、および有益な資料を通じて、実践的な情報を提供しています。最新のツールの使い方や業界の情報・トレンドを継続的に発信することで、製造業の皆様にとって信頼できる情報源となることを目指しています。

MENTENA使用イメージ

MENTENAで、設備保全の
負荷軽減・見える化・コスト削減
をカンタン・シンプルに実現

お気軽にお問い合わせください

MENTENA使用イメージ

© Copyright 2025 YACHIYO Solutions Co., Ltd.
All Rights Reserved.