お役立ち記事
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2024.07.03
日本経済の発展に欠かせない役割を果たしている製造業。しかし、深刻化している問題の1つが人手不足です。工場の人員不足は、事業拡大のみならず企業の存続にも大きな影響を与えます。そこで今回は、製造業がなぜ人手不足になっているのか理由を解説するとともに、人材確保のために企業ができる対策法を解説します。
目次
製造業が悩まされている問題の1つが、深刻な人手不足です。工場の人手が足りなくなっている原因を3つ、詳しく解説していきましょう。
製造業が人手不足に悩まされている原因の1つは、少子高齢化に伴って起こっている生産年齢人口の減少です。生産年齢人口とは、日本の経済活動を大きく支えている15歳から64歳までの人口を指します。
内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」によると、生産年齢人口が最も多かったのは1995年の8,716万人。その後、減少傾向をたどっており2021年には7,450万人、2025年には7,170万人にまで減少すると予想されています。つまり、この30年間で1,546万人もの生産年齢人口が減少するのです。少子高齢化による生産年齢人口の減少は、製造業だけでなく日本全体の労働力不足にもつながっています。
長年働き続けている高齢者がやめずに仕事を続けてくれていることで、製造業の労働人口全体は一定の維持ができていますが、近い将来の高齢者の病気・けが・引退などが引き金になり、急激に労働力が不足する可能性が高まっています。
製造業が人手不足となっている原因には、労働環境におけるイメージの悪さも挙げられます。オイルや薬品などの匂いが漂う現場、ひどく汚れる作業、肉体労働などを強いられることもある工場での勤務。この「きつい、汚い、危険」を意味する「3K」の印象が根強い製造業は、若手労働者から就職先として選ばれにくくなっています。
「3K」は、1980年代のバブル初期ごろに生まれた言葉。当時は、華やかさがある販売職に人気が集まり、肉体労働である工場での勤務が敬遠されていました。働き手にとってマイナスのイメージが強かった製造業。現在もそのイメージが払拭しきれていない側面もあります。
しかし、ものづくりの現場では少しずつ労働環境が変わってきています。話題のAIをはじめとしたIT技術とものづくりの改良による組み合わせが、世界的な競争力の源泉になりつつある点もアピールして、働きがいを伝えていく必要があるでしょう。
少子高齢化による働き盛り世代の減少と、3Kの影響から新しく就職する人が少ない製造業。さらに、人手不足を引き起こしている大きな原因として考えられる点は、入職者数よりも多い離職者数です。
厚生労働省が公開している「令和3年雇用動向調査結果の概要」によると、2021年の製造業の入職者数は約66.4万人に対して、離職者数は約78.6万人。新しく就職した人よりも退職した人の方が約12.2万人も多かったことが分かります。製造業と、他の産業との入職者数・離職者数の差を見比べてみてください。
また、株式会社マイナビ「転職動向調査2024年版(2023年12月調査)」によると、国勢調査における正規雇用者の構成比と比較して、20代~30代の男性の転職者の比率が高いことが分かります。
若手の労働者が定着しにくい状況に陥っているのであれば、労働者の高齢化と退職を見据えて、教育体制の見直しが必要です。
(出典)
株式会社マイナビ | 転職動向調査2024年版(2023年実績)
製造業の人手不足は、企業の存続にさまざまな悪影響を及ぼします。継続して人材が確保できなかった場合に生じる5つのリスクを考えてみましょう。
工場が人手不足に陥ると、生産スピードの低下や効率の悪化は免れません。技術者一人ひとりが努力したとしても限界があり、工場自体の生産性は下がってしまいます。
本来必要な人数を欠いてしまっている場合には、利益が下がることも覚悟しなければならないのです。十分な生産性と安定した経営を維持するために、自動化・省力化などの取り組みと並行して最低限の人材確保は企業にとって必要不可欠といえるでしょう。
十分な利益を得られないと、設備や資材といった必要経費に回す資金も確保できなくなります。
すると、生産を維持することすらままならなくなります。人手不足が慢性化して経営が悪化した場合には、現状の生産ラインの縮小も検討する必要があります。
工場の生産を維持するために最低限必要な人員が確保できていないと、現場で働く技術者1人あたりの作業が増えます。技術者の負担が増加するほど、作業効率の低下は免れません。また、就業時間中に作業が終わらないと残業時間や休日出勤の日数が増える、有給休暇を取得しにくくなるといった事態も起こります。技術者は休みを確保しにくくなるため、モチベーションの低下へとつながるでしょう。
労働環境の悪化が続くと、技術者は耐えられなくなり離職してしまいます。離職者が出ることでさらなる人手不足に陥り、製造業の現場はますます過酷な状態となります。技術者への過度な負担が慢性化する前に、人手不足を早期改善する必要があります。
劣悪な労働環境は、企業の競争力にも影響を及ぼします。労働環境が整っていないと、新しく入った技術者は離職しやすくなるでしょう。新たに有力な人材を確保できない場合、中堅やベテランの技術者が新人でもできる仕事も担当しなければなりません。
本来、企業の第一線で活躍しているはずの人材が付加価値の低い仕事にも時間を取られている状態では、企業の強みや新たな価値を生み出しにくくなってしまいます。安定した企業の土台をつくり、さらなる事業拡大を実現するためには、能力に見合った人材を適切なポジションに配置しておくことが必要不可欠です。
人手不足で競争力が低下していても、工場全体を把握している中堅やベテランの技術者がいれば、しばらくは経営を維持できます。
しかし、技術者一人ひとりが担っている役割が大きくなる、また属人化するほど、突然の変化に対応しきれません。技術者の1人が退職しただけでも、経営が破綻してしまう可能性があります。近年では、製造業で働く技術者の高齢化も進んでいます。定年退職などにより長く勤務しているベテランの技術者が次々と去ってしまうことで、一気に倒産する危険性も高まるでしょう。
東京商工リサーチの調査によると、2023年度の製造業における人手不足関連倒産は18件と増加傾向にあります。さらなる技術の未継承や人手不足による倒産を免れるためにも、ベテランの技術者が勤務しているうちに新たな人材を確保する必要があります。
(出典)
東京商工リサーチ | 2023年度「人手不足」関連倒産 過去最多の191件 「人件費高騰」が3.8倍、「求人難」が2.6倍に増加
企業の存続に多大な影響を与える人手不足。取り返しがつかなくなる前に、迅速な対応が必要です。製造業の人手不足解消に効果的な5つの対策法をまとめました。
エンゲージメントは、「誓約」や「約束」などの意味をもつ言葉です。企業におけるエンゲージメントの向上とは、「従業員との信頼関係を高める」こと。ただ業務を指示するだけでは、従業員との信頼関係を深められません。従業員の立場に立って働きやすい環境を整備する、コミュニケーションを増やす、今後のビジョンを共有するなどの方法で従業員一人ひとりとのつながりを強めておきましょう。
また、長く勤務している従業員と同様に新しく就職した従業員との信頼関係も高めておくことで、若手従業員も離職しにくくなります。さらに、エンゲージメントが向上して従業員自身に会社へ貢献したい意欲が湧くと、企業の競争力アップや利益の向上にもつながるでしょう。
少子高齢化によって働き盛り世代自体の人口が減少している現状では、今まで目を向けていなかった層へのアプローチが必要です。製造業では、「外国人」「女性」「シニア世代」が新たな採用枠として注目されています。開発途上国などから外国人を労働力として受け入れて日本の技能や技術を伝えることは、2017年からスタートした新たな外国人技能実習制度によって政府も推進している政策です。
また、近年では2016年に施行された「女性活躍推進法」や2017年施行の「改正育児・介護休業法」によって、女性が働きやすい環境も整いつつあります。そして、実務経験を伴い指導者として最も戦力となる、シニア世代の確保も忘れてはなりません。適所に外国人や女性、シニア世代の人材を採用することで、人手不足による作業効率の悪化を軽減することも可能です。
製造業の現場で新しい人材を確保するためには、3Kによって根強く残るマイナスイメージを拭う必要があります。そのために有効な手段は、インターネット上での発信です。現代社会は、工場での仕事が3Kと呼ばれはじめたバブル初期ごろと比べて格段にインターネット環境が普及しています。自社のホームページやInstagram、YouTubeといったSNSを使って、アピールしたい工場の様子を発信してみましょう。
「汚い」イメージを払拭したいなら作業現場がきれいに保たれているところ、「危険」や「きつい」イメージであれば機械の導入による作業の効率化を図っているところなどのアピールが効果的です。工場の安全性や衛生環境が整っている状況を積極的に伝えていくことで、若い世代や女性の求職者の増加も見込めます。
ちなみに当社の「MENTENA(メンテナ)」は導入事例やセミナーの形式で、MENTENAを活用しものづくりの強化に取り組む企業をそのホームページへのリンクと合わせて紹介しています。
製造業が「きつい」といわれている理由の1つには、「見て覚える」教育法も挙げられるかもしれません。あいまいな教育体制では、指導する側の人間性や指導される側の能力によって成長スピードに大きな差が生まれるのです。
技術者の高齢化が進んでいる企業であれば、早急に活躍できる人材を育てておかなければなりません。実際の業務に必要な知識やノウハウを可能な限りマニュアル化・標準化すれば、効率のよい人材育成が可能です。また、教育にかかる時間が削減できれば中堅やベテラン技術者の負担も減るため、本来行うべき作業への影響も軽減できます。新しい技術者が定着しづらい、人手不足によって指導する側の人員が少ないといった現状があれば、一度教育体制を見直してみるとよいかもしれません。
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人手不足を補うためには、工場での作業の一部をデジタル化するといった手段も有効です。デジタル化による業務の効率化によって人材不足の解消、技術者への負担軽減、生産性向上などにつながります。
デジタル化を進めるためのシステム導入は、体制が整うまでに一時的に大きなコストがかかります。
しかし、生産性の高い工場は企業の強みとなり、企業の存続のみならずさらなる事業拡大にも大いに役立つでしょう。
製造業が人手不足に陥っている原因とその影響、効果的な対策法について解説しました。
3Kのイメージが根強い製造業ですが、近年普及しているSNSを活用した企業イメージの向上、最新のデジタル技術を積極的に取り入れた現場改革により人手不足の解消が見込めます。
少子高齢化による働き盛り世代の減少と技術者の高齢化の根本的な解決はまだ難しい状況ですが、早期に対策を投じることで現代社会に適応した企業となりえるでしょう。
執筆者
MENTENA編集部
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