2024.05.07
製造業において、安定した設備の稼働が、生産量と品質の維持や安全に働ける環境を作ることにつながります。
また近年では、AIなどの導入で生産効率を高める動きも積極的におこなわれていますが、突然の故障で業務計画が大幅に崩れ、生産の遅れなどで大きな損害を被ってしまうケースも珍しくありません。
設備の安定稼働には、予防保全が不可欠です。そこでこの記事では、予防保全の基礎知識やメリットをご紹介し、あわせて他の保全方法もご紹介します。
目次
予防保全とは、トラブルを起こさないために予防対策として行う保全活動です。
あらかじめ決められた基準や手順に従い、定期的または計画的に保全業務を行うことで、機械の故障や不具合、性能低下などのトラブルを未然に防止することを最優先としています。工場の生産ラインで使われる装置や機械、部品などが予防保全の対象です。
予防保全の目的は、機械設備の故障やトラブルなどを防ぐことにあります。
製造業で大切なのは「トラブルが起こらない環境で、安定した生産が行えること」。設備停止などのトラブルが発生した場合の対処法も重要ですが、もとよりトラブルが起こらないことが望ましいといえるでしょう。そのため、不具合への予防策として日常的に設備の点検やメンテナンス作業を徹底し、安全に稼働できる状態を保つ必要があります。
例えば、ある製造業の工場で予防保全を行うことで、突然の故障による長期停止期間が大幅に減少しました。その結果、生産性が安定し、コスト削減にもつながっています。
また、設備の不具合による不良品を減らすこともできるため、品質も向上しクライアント様からの信頼獲得などにも役立っているのです。
トラブルを未然に防ぐための予防保全には、さまざまな種類がありそれぞれアプローチ方法も異なります。ここでは主に
の4種類を詳しく見ていきましょう。
時間基準保全とは、設定された時間を基準に機械設備などのメンテナンスを行う方法です。ここではメンテナンスを実施する頻度(メンテナンス間隔)が重要になります。
メンテナンスまでの間隔が長ければ、次のメンテナンスを行う前に予期しない故障やトラブルが起こる危険性が高まってしまうので、予防保全の意味がありません。
一方メンテナンスまでの間隔が短すぎると、トラブルは発生しませんがメンテナンスにかかる費用が増え、まだ使用できる部品を交換するなどの無駄にもつながってしまいます。
例として、1年に1回の定期点検などが挙げられます。時間の経過とともに劣化する可能性がある設備に対して、時間基準保全が求められるのです。
時間基準保全は、過去の故障履歴や製造元のメーカーの推奨使用時間をもとにメンテナンスを行うのが理想的でしょう。
利用基準保全とは、設備の利用量や利用回数を基準にメンテナンスを行う方法です。ここでは設備の使用回数などを記録する必要があります。定期的に利用状況を確認し、利用量の目安に近づいてきたらメンテナンスを実施。実際には、1日の平均利用量から基準利用量に達する日数を計算し、メンテナンスのスケジュールを立てていきます。
例として、500ショットおきに部品を交換したり、トラックのオイル交換を10000kmごとに行ったりなどが挙げられます。
利用基準保全は、過去の故障データや製造元メーカーの推奨利用回数を踏まえて、利用量や使用状況をコンスタントにモニタリングし、メンテナンスを行うのがよいでしょう。
状態基準保全とは、設備の稼働状態を定期的に測定して、状態が悪くなった物を交換したり修理したりする方法です。 実際の利用環境や部品などの違いによって、同じ稼働時間や回数でも劣化具合が変化していきます。時間や回数が基準となる時間基準保全や利用基準保全と異なり、設備の状態から部品の交換や機械を修理するタイミングを決めなければならないのです。
例として、モーターの振動を測定し、不自然な振動を感知したら交換や修理を行うことが挙げられます。
状態基準保全では、設備の状態を常に監視し、異常が現れたときに対応するタイミングを決定します。
故障発見保全とは、設備の不具合や故障を早期に発見し、大きなダウンタイムを防ぐ方法です。故障などを早急に発見することで大規模な損害を阻止できるため、製造業では広く行われています。予備の設備や漏電ブレーカなど、普段は稼働していないけれど必要なときに正常な動きが求められる設備などに使われるのが一般的です。
例として、異常音が確認された場合に修理を行うことが挙げられます。
故障発見保全では、設備の異常に対し早期に対応して、ダウンタイムを最小限に抑えることが求められるでしょう。
ここでは、予防保全のメリットについて解説します。
設備に不具合や故障などが確認された状態での稼働は、品質低下を招く恐れがあります。不良品が大量に発生すればそれだけ検知や排除にかかる負担も増え、生産全体のコストが膨らむでしょう。
また、不良や廃棄になればその分の原料に無駄が生じてしまいます。
設備に不具合が起きる前に予防保全を行うことで品質の安定が図れるのはもちろん、コスト削減、原料を最大限活用できるといった効果も期待できるでしょう。
万が一トラブルが発生した場合、トラブルを解消するためにはいったん稼働を止める必要があります。修理のために生産がストップすることもあり、生産計画に大きなズレが生じる可能性も考えられます。停止期間が長くなくても、部品の取り寄せなどに時間がかかってしまうことも。これがもし繁忙期の場合、大きな損害となるでしょう。
継続して予防保全を行うことで、トラブルを抑制し生産性の向上につながるのです。
設備が故障した場合、機械全体に負荷が及ぶだけでなく、故障と修理の繰り返しで寿命を縮めてしまう可能性も考えられます。トラブルが起きる前に修理や部品交換などで対応できる予防保全を行えば、残された寿命を延ばすことが可能です。
予防保全は一定のサイクルで作業が遂行されるため、保全業務のスケジュールを立てやすくなります。必要な部品の調達や、作業スタッフのスケジューリングなどが効率的に行えるのはもちろん、予期せぬ事故が減るため、休日の突然の呼び出しなどの負担を軽減できるでしょう。
予防保全以外の方法として、予知保全や事後保全などもあります。ここでは、それぞれの特徴と予防保全との違いを解説します。
予知保全は設備の劣化状態を基準にした保全方法です。 CBMと似ていますが、一般的にはIoTやAIを使いトラブルが起こりそうな兆候を察知して、修理や交換を行うのが予知保全です。
決められた間隔でメンテナンスを実施するのが予防保全ですが、予知保全はメンテナンスの時期やスケジュールなどは決まっていません。過剰なメンテナンスによるコストを削減できたり、ダウンタイムを最小限に抑えられたりといったメリットがあります。
事後保全とは、故障などの問題が発生した後に対処する保全方法です。 予防保全は、トラブルを未然に阻止するために行われますが、事後保全はトラブルが起きるまでは対応しないのが違いといえます。突然のトラブルへの対応などで生産面に対する影響が考えられますが、トラブルが起きたタイミングで適切な修理などが行える点は、メリットといえるでしょう。
生産設備における予防保全のメリットや重要性について解説しました。故障やトラブルを未然に防ぐことができる予防保全は、生産性の安定や業務を円滑に進めるためには欠かせない設備保全です。
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執筆者
MENTENA編集部
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