お役立ち記事
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2024.07.01
ヒューマンエラーとは、人間の行動が原因で生じるミスや失敗のこと。人間だからこそミスや失敗は起きるものですが、製造業の現場では1回のヒューマンエラーで、怪我人が出たり多額の損害金を被ったり、重大な事故につながる可能性もあります。
そこで、この記事では、ヒューマンエラー対策10選をご紹介します。社員や会社を守れるよう、製造業で起こりやすいミスや発生原因を知り、的確に対策を講じましょう。
目次
ヒューマンエラーとは、人為的ミスや不安全行動とも呼ばれ、システムや設備などの不備ではなく、作業者の過失によって発生するトラブルのことです。
厚生労働省が毎年公表している「労働災害発生状況報告書」によると、2023年度の労働災害死傷者数は製造業が最も多く、27,194人となりました。また、製造業全体で発生した労働災害の約60%以上が、作業ミスや注意不足など、ヒューマンエラーに起因しているとされています。
特に製造業において「はさまれ・巻き込まれ」事故は非常に多く、重大な怪我や死亡事故につながるリスクが高いとされています。さらに、そうした重大事故は同時に企業の信頼や評判を損ねる大きな要因にもなります。
製造業では、ヒューマンエラーによって不良品や損失を出した場合、その原因となったミスを「ポカミス」と呼ぶこともあります。ポカミスはケアレスミスとも言い換えられるように、単純な不注意やうっかり、確認不足によって発生します。重大なミスではないものの、不良品や作業のやり直し、工程の遅延などを引き起こし、結果的に取引先・消費者からのクレームや最悪の場合は製品のリコール・自主回収といった大きな損失につながることもあります。
ヒューマンエラーは「意図した行動で起こるもの」と「意図しない行動によって起こるもの」の大きく2つに分類されます。意図した行動で起こるミスは、決められているルールや手順を守らないことで発生するもの。意図しない行動で起こるミスは、知識やスキル不足、不慣れな状況下で発生するものを指します。
人間は機械ではないため、すべての行動を寸分の狂いもなく的確にこなすことは不可能です。特に「設備の操作」や「目視確認で行う検査」では作業者のスキルに依存するからこそ、人為的ミスが発生する可能性が高まります。製造業においては、小さなポカミスと侮ることなく、ヒューマンエラーを起こさないように対策を施すことが重要です。
ここでは、製造業でのヒューマンエラーを「意図的に発生するもの」と「意図せずに発生するもの」に分けて詳しくみていきましょう。
まずは、意図的に発生するヒューマンエラーから説明します。
手抜きや慢心を原因とするヒューマンエラーは、ベテラン社員に起こりがちなトラブルです。作業に慣れていると「いつもと同じ作業だから」という理由で、納期や工程の確認を疎かにすることがあります。手抜きや慢心によるヒューマンエラーはリスクテイキングとも呼ばれ、危険性を分かっていながらそれを享受する危険な行為です。また「作業に慣れている自分が間違えるはずがない」というおごりの気持ちが、人為的なミスを招く場合もあるでしょう。
報告・連絡・相談(ホウレンソウ)やチェックの重要性を侮った結果、生じるヒューマンエラーです。判断ミスをする社員は、リスクを過小評価しており、決められた作業手順や規則を簡略化する傾向にあります。
続いて、意図せずに発生するヒューマンエラーについて説明します。
製造業では、生産する品種が急に変わることは珍しくありません。情報の伝達や連携不足による人為的ミスは、そういった場面で起こりやすいヒューマンエラーです。生産管理・納期・図面・顧客の要求といった情報がスピーディーかつ的確に作業者の間で伝達できる体制が整っていなければ、いつまでもヒューマンエラーを防ぐことはできません。また、人づてに情報を伝達していく場合、伝言ゲームのように自分の意図しない内容で話が伝わることも大いに考えられます。
操作を間違えるなど、慣れていない作業をすることで起きるヒューマンエラーです。新入社員や新人に起きやすいミスですが、正しい方法・手順が指導されていないなど、教育体制そのものに原因があることも。だからこそ、新入社員や新人のミスを防ぐには、立案した教育計画に沿って適切に教育・訓練することが大切です。
一方で、ベテラン社員であっても、知識不足によるヒューマンエラーが起きる可能性は否定できません。製造業の現場では、ルール改定や業務プロセスが変更されることがよくあるからです。ルールや業務プロセスの知識に乏しければ、社歴が長くてもミスを犯すことは十分に考えられます。ヒューマンエラーを防ぐには、社歴の長さに限らず、社員全体が知識・スキルを高める必要があるでしょう。
作業内容や工程が煩雑であるほど、作業員にはプレッシャーや焦りといった心労をかけます。時間や気持ちに余裕がない現場では、ヒューマンエラーがいつ発生しても不思議ではありません。また、作業負荷の高い状況が続き疲労が過度に蓄積されれば、普段よりパフォーマンスも低下しやすくなります。ヒューマンエラーの予防には、適度な休憩を取り入れ、身体的・精神的に疲労が溜まらないような体制を整えることが大切です。
思い込みや確認不足によっても、ヒューマンエラーは生じます。手抜きや慢心によるミスと似ていますが、重大な警告を見落とす・指示書や仕様書などの確認を怠るといったミスは、意図的に発生するわけではありません。なかでも確認不足が起きやすいのは、担当者ひとりで作業を行っているとき。毎回同じ場所や同一の内容を確認する場面で「いつも通りだから大丈夫」と気が緩み、人為的ミスが生じやすくなります。
空調や照明が整備されていない作業環境の悪さも、ヒューマンエラーを引き起こしやすくする要因の1つ。設備メンテナンスの不足により、安全性が確保されていないことは作業を進めるうえで大きな問題点となります。
そのほか、ルールを守らない・品質管理の重要性が浸透していない・責任の所在が不明確・組織全体のモラル低下なども、作業環境を悪化させる要因です。適切な職場環境を維持するには「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」と呼ばれるスローガンを徹底することが非常に大切。基本的な項目ではありますが、実際に作業環境が整い業務の効率化が期待できるとして、製造業やサービス業で広く導入されています。
製造業で起きるヒューマンエラーを予防するには、主に以下のような対策があります。
意図せずに発生するヒューマンエラーは、コミュニケーション不足に起因するものがほとんど。現場で作業員一人ひとりが能力を発揮するには、知識や経験・情報を新入社員・ベテラン社員を問わず全員で共有し合い、スキルを高める必要があるからです。そのためには、まず経営者・管理者が自らコミュニケーションを積極的に取り、作業員の声に耳を傾けることを心がけましょう。作業員が分からないことを積極的に聞ける雰囲気・風潮をつくるのも、経営者・管理者の重要な役割です。
作業に集中しやすい環境を整備することで、防げるヒューマンエラーもあります。なかでも現場のレイアウトの見直しや温度・騒音・照明管理などは、作業員のストレスを軽減させ、人為的ミスを防ぐための基本的かつ重要な対策です。作業環境が整うことは、ヒューマンエラーの予防だけでなく、作業の効率アップやリスク管理にも役立ちます。劣悪な環境下で社員が体調不良を引き起こさないためにも、現場の状況を見直すことは管理者・経営者がすぐに取り入れるべき対策の1つです。
新入社員をはじめとした作業者の知識やスキルが向上すれば、ヒューマンエラーが減少するほか、リスクリテラシーも高まります。定期的な研修や勉強会は、作業員の仕事に対する意識を向上させ、安全確認の重要性を認識させるうえで有用です。過度のプレッシャーをかけないように注意しながら、作業員一人ひとりの特性に応じた教育を施すとよいでしょう。
起こりうるリスクがあらかじめ想定できていれば、ヒューマンエラーの発生頻度は低くなります。こういった危険予知活動はKY活動とも呼ばれており、職場に潜む危険を洗い出し、問題点やリスクに対策を講じることを言います。具体的なKY行動として広く用いられているのが、行動目標にした労働災害防止対策を個々の作業員が作業中に指さし呼称し、安全確認する方法。職場全体でリスク管理が意識されることで、ヒューマンエラーを防ぐ効果が見込めます。
急いでいたり慌てたりしているときこそ、人はミスをしやすいものです。だからこそ、それぞれの工程で作業を一時的にストップし、異常やミスがないかを確認することは、ヒューマンエラーの予防につながります。一人ひとりの作業員が確認作業を習慣づけるだけでなく、チーム全体でチェック体制を強化できれば、さらに人為的ミスの発生を抑えられるはずです。
業務の見直しによって不要な作業がなくなれば、ヒューマンエラーが起きるリスクを軽減できます。また、人間の行動が原因でミスが起きているのであれば、ヒューマンエラーが生じやすい工程をシステムや設備の導入などで自動化させるのも有効な手段です。人が行う作業が減れば、その分社員の作業負荷やストレスは減り、安全性が大きく向上します。さらに、自動化を推進することで、業務効率化・品質向上・人手不足解消といった副次効果も見込めるでしょう。
ヒヤリハットとは、危ないことが起こったけれども、幸い災害にはつながらなかった出来事のこと。具体的には「機械に手や指が挟まれそうになった」「回転する機械に軍手や衣服が巻き込まれるところだった」といった事例が挙げられます。「1件の重大事故の背後には、300件ものヒヤリハット事例が存在する」とも言われるため、ヒューマンエラーを未然に防ぐにはヒヤリハットの経験や事例を社内で共有し、再発防止に努めることが重要です。
作業や業務フローが複雑化するほど、人為的ミスは起きやすくなります。そのため、ヒューマンエラーを防ぐには、わかりやすい作業手順書やマニュアルの作成が効果的。作業手順書やマニュアルがない場合は速やかに作成するとともに、併せて既存ドキュメントの見直しも行いましょう。内容を精査することで「作業手順書・マニュアルがあるのに人為的ミスが多発している」ケースを防げます。
作業手順書の作り方をチェック!製造業に必要な内容と効果的な運用ポイントを解説
ポカヨケとは、ヒューマンエラーによる不良品の発生を予防するために、製造ラインや作業工程で用いられている仕組み・装置のこと。「ミスを発生させない」「ミスをすぐに発見できるようにする」「ミスによる影響をできるだけ少なくする」のがポカヨケの基本的な考え方であり、うっかりミスが生じても物理的に次のステップに進めないようになっているのが特徴です。製造業では、主なポカヨケ対策として、治具やバーコードリーダー、IoT、AIなどさまざまな技術が活用されています。
「MENTENA(メンテナ)」とは、設備保全に特化したクラウドサービスです。製造業をはじめとしたさまざまな業界で導入されており、ペーパーレス化・脱エクセルを実現しています。ヒューマンエラーを防止にもつながるツールで、過去の作業履歴を蓄積・共有することによる作業者の知識・技術の継承や、マニュアルや図面のファイルなどをクラウド上に保管し、いつでも・どこからでもパソコンやスマートフォンで情報を共有・閲覧することが可能です。
また、スマートフォンやタブレット、パソコンで作業内容を入力し、業務進捗や保全費用、在庫管理、点検結果などを作業者と管理者が簡単に共有することが可能です。紙での管理がなくなることで、現場では作業時間が大幅に短縮し、作業負荷の軽減が見込めます。
さらに、設備の故障や稼働率といった重要なデータも蓄積できるようになっており、予防保全を実現することが可能。現場の作業者だけでなく、管理者・経営者にも有益なのが特徴です。
人間が作業する以上、ヒューマンエラーを完全に防ぐことはできませんが、対策を講じることで予防できるミスも多くあります。もし、現場でのコミュニケーション不足や作業負荷などが原因でヒューマンエラーが起きているのであれば、ぜひMENTENAをご検討ください。MENTENAは、製造業でのヒューマンエラー防止や製品の品質担保、現場の安全性向上に大きく貢献します。
執筆者
MENTENA編集部
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