設備管理

2025.04.21

4M変更はどこまで管理する?ISO・IATF・GMPの基準を解説

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製造業において「4M変更(人・機械・材料・方法)」の管理は、品質や安全性を守るために欠かせません。とはいえ、「どこまで管理すればよいのか?」と悩む方も多いのではないでしょうか。

結論として、4M変更の管理範囲は「変更が品質やプロセスに与える影響度」に応じて企業・業界ごとに分類されることが一般的です。また、各種規格・基準でも、変更の影響に応じた適切な管理が求められています。

この記事では、4M変更の概要はもちろん、ISO 9001やIATF 16949、GMPなどの基準を踏まえながら、変更の重要度に応じた判断方法を具体的に解説します。

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目次

【結論】4M変更は影響レベルによって必要な範囲が異なる

「4M変更は重要だが、どこまで変更管理を行うべきか」という点は多くの製造業の現場で悩みの種となっています。
結論からいえば、4M変更の範囲は「変更が製品品質やプロセスに与える影響レベル」によって判断すべきであり、すべての変更に同じレベルの管理を適用することは非効率です。

 

そのため、企業ごとに「何を重大な変更とするか?」を明確に定め、適切に管理することが重要となります。詳しくは後述しますが、一般的には「重大」「中程度」「軽微」といった区分を用いてリスクベースで対応範囲を決めるケースがあります。

そもそも4M変更とは何か?

4M変更とは、製造プロセスにおける重要な4つの要素(Man、Machine、Material、Method)の変更を管理するための体系的なアプローチです。品質マネジメントシステム(QMS)において、製品品質の一貫性を確保するために不可欠な管理手法となっています。

 

4M変更管理は、主に製造業(自動車産業、医薬品製造、食品製造など)で広く採用されており、変更によって生じる可能性のあるリスクを事前に評価し、適切な対応策を講じることを目的としています。

 

業界によっては、4Mに「Measurement(測定)」を追加した5M「Environment(環境)」を足した4M+E、5Mにさらに「Management(管理)」も加えた6Mなどの概念を使う場合もあります。

基本的には生産の根本的な4つの要素の変更を管理するという考え方が共通しているため、これ以降は4Mに絞って解説します。

 

関連記事:
>>QMSは本当に意味がない?重要性や活用ポイントを簡単に解説
>>製造業における品質目標とは?6つの具体例と目標達成のポイント

4M変更のプロセス

4M変更は、品質や顧客要求への適合を維持するために、それぞれの変更の影響を事前に評価し、管理された形で実施する必要があります。以下に、一般的な変更管理のプロセスを示します。

 

  • 変更の提案・申請
  • 変更の影響評価(リスクアセスメント)
  • 変更計画の策定
  • 関係者によるレビューと承認
  • 変更の実施
  • 変更後の検証
  • 変更の完了と記録

 

4M変更管理は、製品品質の維持・向上、顧客満足の確保、コンプライアンスの遵守、そして業務効率の最適化につながる重要な経営ツールといえます。

 

関連記事:
>>品質管理と品質保証の違いとは?品質向上に向けての課題と対策についても解説

4M変更の対象となる4つの要素(Man, Machine, Material, Method)

「4M変更の対象となる4つの要素(Man, Machine, Material, Method)」をイメージできる画像

製造プロセスや品質管理において重要な4M変更管理。「Man(人)」「Machine(機械・設備)」「Material(材料・部品)」「Method(方法・手順)」の4つの要素はいずれも品質に直接影響を与えるため、変更する際には適切な管理と評価が必要となります。

 

製造現場では、これら4つの要素のいずれかに変更が生じると、製品品質や製造プロセスに影響を及ぼす可能性があります。そのため、変更の内容や影響範囲を事前に評価し、必要な検証や妥当性確認を行うことが重要です。

 

以下では、それぞれの要素における変更管理のポイントと具体的な対応方法について詳しく説明します。

Man(人)の変更

人に関する変更は、作業者の知識、スキル、経験などが製品品質に直接影響するため、適切な管理が必要です。特に手作業や判断を要する工程では、人の変更が品質に大きく影響します。

人の変更が必要なケース

人の変更が必要となる主なケースには以下のようなものがあります。

 

  • 生産ラインの作業者の交代や配置転換
  • シフト制における担当者の変更
  • 品質管理担当者の変更
  • 監督者や管理者の変更
  • 熟練者の退職や異動による技術伝承
  • 新入社員や未経験者の配置

 

人の変更は単なる人員の入れ替えではなく、その変更が製品品質や製造プロセスに与える影響を考慮する必要があります。特に複雑な作業や高度な判断を要する工程では、担当者の変更が製品品質に大きく影響することがあります。

 

また、人の変更はその他の変更(3M)よりも比較的頻繁に起こります。これによるリスク軽減のためには変更管理はもちろん、技術者の多能工化(マルチスキル化)がカギになります。

人の変更における注意点

人の変更を行う際には、以下の点に注意する必要があります。

 

  • 適切な技能訓練と知識移転の実施
  • 作業標準書や手順書の理解度確認
  • 資格や認証が必要な作業の場合、資格取得の確認
  • 新任者のパフォーマンス評価と監視期間の設定
  • 重要工程での技能評価(スキルマップ)の実施

 

特に医薬品製造や自動車部品製造など品質要求の厳しい業界では、人の変更に伴う教育訓練記録や力量評価を文書化し、変更前後での品質への影響を評価することが求められます。

 

例えば、医薬品製造におけるGMPでは、製造担当者の変更に際して適切な教育訓練と記録の保管が義務付けられています。

Machine(機械)の変更

機械設備の変更は、製品の物理的特性や品質に直接影響するため、慎重な変更管理が必要です。特に精密部品の製造や自動化された工程では、機械の変更が製品品質を左右します。

機械の変更が必要なケース

機械・設備の変更が必要となる主なケースには以下のようなものがあります。

 

  • 製造設備の新規導入や更新
  • 既存設備の修理や部品交換
  • 設備の配置変更やレイアウト変更
  • 制御システムやソフトウェアの更新
  • 測定機器や検査装置の変更
  • 金型や治具、工具の変更
  • 納品先からの要求事項の変更

 

機械の変更は製品の寸法精度、外観、機能特性などに直接影響するため、変更後の設備性能検証と製品品質の確認が不可欠です。例えば、射出成形機の変更は、樹脂製品の寸法や外観に影響を与える可能性があります。

 

関連記事:
>>設備更新とは?更新時・更新後の課題や延命化との違いを詳しく解説

機械の変更における注意点

機械・設備の変更を行う際には、以下の点に注意する必要があります。

 

  • 設備の初期性能検証(IQ:Installation Qualification)
  • 運転性能検証(OQ:Operational Qualification)
  • 製品性能検証(PQ:Performance Qualification)
  • キャリブレーション(校正)の実施
  • 変更後の設備パラメータの最適化
  • 設備メンテナンス計画の見直し

 

自動車業界では、IATF16949(自動車産業向け品質マネジメントシステム規格)において、機械設備の変更に伴うプロセス影響分析や再検証が求められています。特に安全関連部品の製造設備変更では厳格な検証が必要です。

 

さらに、設備の変更は意図せぬトラブルの誘因となるケースもあるため、万一のトラブル発生時に迅速な原因究明・再発防止ができる体制整備も重要です。
>>工場内で発生した設備トラブルへの正しい対応から予防策まで徹底解説

Material(材料)の変更

材料の変更は、製品の物性、機能、安全性、信頼性などに直接影響するため、慎重な評価と検証が必要です。原材料の特性変化は最終製品の品質に大きく影響します。

材料の変更が必要なケース

材料・部品の変更が必要となる主なケースには以下のようなものがあります。

 

  • 原材料のサプライヤー(供給元)変更
  • 材料グレードや仕様の変更
  • 代替材料への切り替え
  • 部品の設計変更や仕様変更
  • 材料コストダウンのための変更
  • 環境規制対応のための材料変更(EUのRoHS指令の影響を受けた変更など)

 

材料変更は最終製品の性能や安全性に直結するため、変更前に入念な評価試験を行い、変更後も継続的なモニタリングが必要です。特に食品や医薬品、化粧品などの分野では、材料変更による安全性への影響評価が重要になります。

材料の変更における注意点

材料・部品の変更を行う際には、以下の点に注意する必要があります。

 

  • 材料の受入検査基準の見直し
  • 材料特性の評価(物理特性、化学特性、機械特性など)
  • 製品への影響評価(性能、信頼性、寿命など)
  • 製造プロセスへの影響評価(加工性、生産性など)
  • 安全性評価(有害物質、アレルゲンなど)
  • 規制対応(RoHS、REACH、食品衛生法など)

 

例えば、医薬品原材料の変更では、原材料の同等性評価や安定性試験、場合によっては臨床試験の再実施が必要になることもあります。また、食品業界では材料変更に伴うアレルゲン管理や表示変更の検討が必要です。

 

(出典)
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 | 医療機器の生物学的安全性評価と原材料変更について
厚生労働省 | 安定性試験ガイドラインについて

Method(方法)の変更

製造方法や手順の変更は、製品品質の一貫性や安定性に影響するため、適切な変更管理と検証が必要です。特に品質に直結する重要工程では、方法の変更が大きなリスクとなる可能性があります。

方法の変更が必要なケース

方法・手順の変更が必要となる主なケースには以下のようなものがあります。

 

  • 製造プロセスの変更や最適化
  • 作業手順や標準作業書の改訂
  • 工程パラメータ(温度、圧力、時間など)の変更
  • 検査方法や品質管理方法の変更
  • 生産効率向上のためのプロセス改善
  • 自動化や省人化のための工程変更

 

製造方法の変更は製品品質の安定性に直接影響するため、変更前後での製品品質の同等性評価や工程能力の検証が重要です。例えば、食品製造ではHACCPにより衛生管理の工程を明確化し、ハラル認証では宗教的配慮から消毒工程にも独自の制約があります。いずれも変更の正当性を事前に確認する体制が求められます。

方法の変更における注意点

方法・手順の変更を行う際には、以下の点に注意する必要があります。

 

  • プロセスFMEA(故障モード影響解析)の実施
  • 工程パラメータの最適化と許容範囲の設定
  • 変更後の工程能力評価(Cpk値など)
  • 作業手順書の改訂と教育訓練
  • 変更前後の製品品質比較評価
  • 必要に応じたプロセスバリデーションの実施

 

ISO 9001では、プロセス変更に伴うリスク評価と変更管理が要求されており、変更の記録と変更による影響の評価が必要です。

 

4M変更管理を適切に実施するためには、これら4つの要素それぞれについて、変更の影響範囲と、後述する重要度を評価し、必要な検証と妥当性確認を行うことが重要です。
特に複数の要素が同時に変更される場合は、相互作用による影響も考慮する必要があります。

 

変更後の工程能力評価(Cpk値など)は、工程の安定性やばらつきが許容範囲内に収まっているかを定量的に確認するために重要です。
この評価に用いられる代表的な手法がSPC(統計的工程管理)であり、製造現場では4M変更後の影響を見える化・数値化する手段として広く活用されています。
>>SPCとは?SQC(統計的品質管理)との違いと管理図のルール

 

 

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4M変更はどこまで管理すべき?レベル別の判断基準と対応

「4M変更はどこまで管理すべき?レベル別の判断基準と対応」をイメージできる画像

4M変更の範囲や対応レベルは、品質や製品への影響度によって判断する必要があります。多くの企業では、変更の影響度をもとに独自に「重大な変更」「中程度の変更」「軽微な変更」の3段階に分類し、それぞれに応じた管理手続きを定めています※。ここでは各レベルの判断基準と対応方法について解説します。

 

※あくまでISOなどの規格が推奨するリスクに基づいたアプローチに基づいた実務上の運用です。

重大な変更(Major Change)

重大な変更とは、製品の品質、安全性、有効性に大きな影響を与える可能性がある変更です。このレベルの変更はもっとも厳格な管理と広範囲な検証が必要となります。

重大な変更の判断基準

以下の要素に該当する場合、重大な変更として扱うことが一般的です。

 

  • 製品の設計や仕様に関わる変更
  • 主要な原材料の変更(供給元の変更を含む)
  • 製造工程における重要パラメータの変更
  • 品質に直接影響する検査方法の変更
  • 製造拠点や主要設備の変更
  • 法規制対応に関わる変更

重大な変更における必要なアクション

重大な変更を実施する場合は、以下のプロセスを経る必要があります。

 

  • 変更管理計画書の作成と承認
  • リスクアセスメントの実施
  • バリデーション計画の立案と実行
  • 顧客への事前通知と承認取得(必要に応じて)
  • 変更前後の製品品質の比較評価
  • 変更実施後のモニタリング期間の設定
  • 関連文書の更新(手順書、仕様書、図面など)

 

医薬品業界では、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のガイドラインに従い、重大な変更は規制当局への申請や承認が必要になることがあります。

 

業界 重大変更の例 必要な対応
自動車(IATF16949) 安全関連部品の製造方法変更 PPAP再提出、顧客承認、完全バリデーション
医薬品(GMP) 原薬製造工程の変更 一部変更申請、安定性試験、バリデーション
医療機器(ISO13485) 滅菌方法の変更 設計変更管理、再バリデーション、認証機関審査
食品(FSSC22000) アレルゲン管理に関わる変更 HACCP計画の見直し、検証プロセスの再実施

 

(出典)
医薬品医療機器総合機構​(PMDA) | ​ICH Q12「医薬品のライフサイクルマネジメントにおける技術上及び規制上の考え方に関するガイドライン」説明会資料

中程度の変更(Moderate Change)

中程度の変更は、品質や性能に一定の影響があるものの、製品の本質的な特性を変えるほどではない変更を指します。

中程度の変更の判断基準

中程度の変更として、具体的には以下のような変更が該当します。

 

  • 副次的な原材料の変更
  • 同等性が確認されている代替材料の使用
  • 製造装置の同等品への更新
  • 作業者の変更(十分な教育訓練を前提)
  • 製造条件の小幅な調整
  • 検査頻度の変更

中程度の変更における必要なアクション

中程度の変更を実施する際には、以下のプロセスが必要です。

 

  • 社内変更管理プロセスによる審査と承認
  • 限定的なリスクアセスメント
  • 変更影響評価の実施
  • 必要に応じた検証試験
  • 関連文書の更新
  • 変更後の初期ロットの重点管理

 

ISO9001:2015では、こうした変更に対して計画的アプローチを取ることが要求されており、変更による意図しない結果を評価することが求められています。

 

4M要素 中程度変更の例 必要な検証
Man(人) 生産ラインオペレーターの変更 教育訓練記録、初期生産品の集中検査
Machine(機械) 同等スペックの設備への更新 設備適格性評価(IQ/OQ/PQ)、初期生産の検証
Material(材料) 同一仕様の材料で供給元変更 受入検査の強化、初期ロットの性能評価
Method(方法) 工程内検査方法の変更 新旧方法の相関性評価、検出力確認

 

軽微な変更(Minor Change)

軽微な変更は、品質や性能にほとんど影響を与えない、あるいはまったく影響しない変更を指します。

軽微な変更の判断基準

軽微な変更として扱うことができるものとして、以下のような変更が該当します。

 

  • 文書の形式的な修正(誤字脱字の修正、レイアウト変更など)※
  • 製造記録様式の微修正
  • 外観に影響しない生産ラインのレイアウト変更
  • 非接触部品の材質変更
  • 製造工程における非重要パラメータの微調整
  • 検査装置の同等品への入れ替え(検査精度に影響なし)
  • 同一人物の担当工程の変更

 

※ただし、業界や企業によっては形式的な変更であっても変更管理手続きが必要とされる場合があります。

軽微な変更における必要なアクション

軽微な変更においても、以下のような基本的な管理は必要です。

 

  • 変更内容の記録
  • 関連する文書の更新
  • 必要に応じた教育・周知
  • 簡易的な影響評価

 

製薬業界では、GMP事例集に基づき、軽微変更でもGMPに関わるすべての変更について、適切な文書化と記録が求められます。

 

(出典)
厚生労働省 | GMP事例集(2022年版)について(◆令和04年04月28日事務連絡)

業界別の軽微変更の取り扱い

業界によって軽微変更の定義や取り扱いが異なります。

 

業界 軽微変更の範囲 管理レベル
自動車業界 非機能部品の外観変更、梱包形態の変更 社内承認のみ、顧客通知不要の場合あり
医薬品業界 製造記録様式の変更、製造区域の清掃方法変更 変更管理記録必須、年次報告対象
電子機器業界 検査冶具の更新、作業指示書の明確化 変更通知と文書更新
食品業界 副原料の同一グレード内での変更 内部記録と監査時確認

4M変更の判断ツールとチェックリスト

4M変更の範囲を適切に判断するために、多くの企業では変更影響度評価表や決定フローチャートを活用しています。以下は一般的な判断のためのポイントです。

変更影響度の評価ポイント

  • 製品の安全性への影響
  • 製品の主要機能・性能への影響
  • 法規制要求事項への影響
  • 顧客要求事項への影響
  • 過去のトラブル事例との関連性
  • 重要品質特性(CTQ)への影響
  • 工程能力(Cpk)への影響

 

これらの評価ポイントをスコアリングし、合計点数によって変更レベルを判断するシステムを構築している企業も多いです。

 

4M変更の範囲を決定する際のもっとも重要なポイントは、変更による「リスク」「影響の大きさ」を適切に評価することです。過剰な管理は業務効率を低下させますが、管理不足は品質問題につながります。適切なバランスを取ることが重要です。

変更レベル判断のためのチェックリスト

以下のチェックリストを活用することで、4M変更のレベルを判断する助けになります。

 

質問項目 はい いいえ
製品の物理的特性・化学的特性に影響するか 重大/中程度 中程度/軽微
製品の機能・性能に影響するか 重大 中程度/軽微
設計文書の変更が必要か 重大/中程度 中程度/軽微
顧客の承認が必要か 重大 中程度/軽微
法規制当局への申請/通知が必要か 重大 中程度/軽微
従来とは異なる技術/技能が必要か 重大/中程度 軽微
製品寿命や信頼性に影響するか 重大 中程度/軽微
工程能力に影響するか 重大/中程度 軽微

 

最終的には、各社の品質方針や製品特性、業界特性に応じた判断基準を明確に文書化し、一貫して適用することが重要です。変更管理の目的は「変更によるリスクを最小化しながら、継続的改善を実現すること」であることを忘れないようにしましょう。

 

 

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4M変更の管理基準 – ISOや業界規格の要件

「4M変更の管理基準 – ISOや業界規格の要件」をイメージできる画像

ISOや業界ごとの規格においては、4M変更に対する明確な要件が定められており、それぞれの業界で異なる基準が適用されています。

 

以下では、代表的な規格であるISO 9001、IATF 16949、ISO 13485、GMPにおける4M変更管理の要件について解説します。

「変更管理」の厳格度比較

4M変更管理は規格ごとに厳しさが異なり、特にGMPは法令に基づくもっとも厳格な運用が求められます。すべての変更に対して文書化・再評価・品質部門の承認が必須で、違反時には行政処分や製品回収のリスクがあります。

 

ISO 13485やIATF 16949も製品の安全性に関わる変更では高い管理レベルが要求されますが、GMPほどの法的強制力はありません。ISO 9001はもっとも自由度が高く、運用は組織の裁量に委ねられています。各規格の特徴については、以降のセクションで個別に紹介します。

 

規格名 業界 法的拘束力 変更管理の厳格さ 特徴的なポイント
GMP 医薬品・医療品 法的拘束あり(厚労省、省令レベル) ⭐⭐⭐⭐ 「逸脱=行政処分対象」。手順逸脱や記録不備でも査察指摘・出荷停止も
ISO 13485 医療機器 医薬品に次ぐ厳しさ(薬機法下) ⭐⭐⭐ 医療機器変更は申請・再承認要。トレーサビリティ・リスク評価が必須
IATF 16949 自動車産業 顧客要求や業界基準に基づく ⭐⭐ 設備や手順変更には顧客承認や再バリデーションが必須(特に安全部品)
ISO 9001 全業種 法的拘束はなし(任意) 変更管理はあくまで「品質マネジメントの一環」。運用自由度が高い

ISO 9001(JIS Q 9001)

ISO 9001:2015の8.5.6では、製造またはサービス提供に関する変更を「要求事項への継続的な適合を確保するために必要な程度までレビューし、管理すること」、および「レビュー結果、正式に許可した人、必要な処置を記録として保持すること」が求められています。
特に、8.5.6条項(管理された変更)では、「変更は計画的に管理され、品質に影響を及ぼさないようにする」ことが求められています。

 

(出典)
日本品質保証機構(JQA) | ISO 9001(品質)

ISO 13485(医療機器業界)

医療機器業界向けの品質管理規格であるISO 13485では、生産プロセスの変更は品質マネジメントシステム上で管理されるべきとされています。特に医療機器に関わる重大な変更は、各国の規制要求(例:PMDA、FDAなど)に基づき、規制当局への届出や承認が必要になることがあります。

 

(出典)
日本品質保証機構(JQA) ISO 13485(医療機器・体外診断用医薬品)

IATF 16949(自動車業界)

自動車業界の品質管理規格であるIATF 16949では、4M変更の管理が非常に厳格です。自動車メーカーは、サプライヤーに対して4M変更が発生する場合、事前に顧客へ通知し、承認を得ることを義務付けていることが一般的です 。

例えば、以下のような変更は、事前通知が必要とされることが多いです。

 

  • 生産拠点の移転
  • 新しい設備・ラインの導入
  • 主要材料の変更
  • 製造方法の大幅な改良

 

サプライヤーは、これらの変更に対してリスク評価を行い、影響分析の結果を顧客へ提出する必要がある場合があります。

 

(出典)
日本品質保証機構(JQA) IATF 16949(自動車)

GMP(医薬品業界)

GMP(Good Manufacturing Practice)は、医薬品業界の品質管理基準であり、変更管理(Change Control)が義務付けられています。厚生労働省(MHLW)のGMP省令では、「製造方法、設備、原材料の変更が品質に影響を与える可能性がある場合、品質管理部門の承認を得ること」が求められています 。

 

特に、重大な変更(例、生産設備の新規導入、製造プロセスの大幅変更など)は、規制当局への事前報告が必要となる場合もあり、慎重な管理が求められます。
2023年度の厚生労働省資料(全国薬務主管課長会議)では、以下のような4M変更管理の不備が実際の行政指導事例として報告されています。

 

  • Method(方法):承認と異なる製造工程や試験法の運用
  • Material(材料):未承認添加剤の使用や原料の誤使用
  • Man(人):記録の虚偽記載、人員の教育訓練不足による手順違反

 

これらの事例は、適切な変更管理手順や教育訓練体制があれば未然に防げた可能性があり、4M変更を的確に捉えて管理することの重要性を示しています。

 

(出典)
e-Gov 法令検索 | 医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令
厚生労働省 | 令和4年度 全国薬務主管課長会議資料

まとめ

設備管理クラウドサービスMENTENA

この記事で解説したように、4M変更管理はリスク評価を基軸に、重大度に応じた対応が求められます。これを実践するには、明確な判断基準・文書化・教育・承認フローといった社内体制の整備が欠かせません。

 

ただし、変更管理は単にISOやGMPなどの「基準を満たすため」や「行政指導を回避するため」だけに行うものではありません。

 

  • 「Man(人)」が変われば、習熟度や判断基準にバラつきが生まれる
  • 「Machine(機械)」が変われば、動作条件や精度が異なる
  • 「Material(材料)」が変われば、物性や相性に影響が出る
  • 「Method(方法)」が変われば、結果や処理フローに誤差が生じうる

 

つまり、「変更 = リスクの発生源」です。そのため4M変更管理は、「リスクを洗い出し、未然に制御するための仕組み」として必要です。具体的には、現場で起きた変更情報を記録・共有する仕組みです。

 

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