2024.11.06
製造業における生産性向上と設備効率化のための重要な手法であるTPM(Total Productive Maintenance)活動を成功させるためには、体系的な進め方を知ることが大切です。
この記事では、TPM活動を効果的に進めるための7つのステップについて、各ステップの目的と実施方法、注意点を説明していきます。
製造業の現場管理担当者や経営者の方は、自社にTPM活動を導入する際、この記事を参考に取り組みを進めてみてください。
目次
TPM活動とは、製造業において故障の予防やムダを排除し、設備の稼働率を最大化することで、生産性を向上させるための手法です。
機械の専門家だけでなく現場の技術者を巻き込み、全従業員が設備の保全や改善に参加することを重視し、全社的な改善活動を推進します。
これにより、コスト削減や品質向上、お客さま満足度の向上につながります。
TPM活動の概要に関して、詳しくは以下の記事をご覧ください。
>>製造業のTPM活動とは?時代遅れといわれる理由と解決策を簡単に解説
TPM活動は、以下の7つのステップに沿って進めていきます。
それぞれのステップについて詳しく説明していきます。
TPM活動の第一歩は、経営トップによる実施宣言です。
この宣言の目的は、全社的なTPM活動への取り組みを明確にし、全従業員の意識統一を図ることにあります。
実施方法としては、まず経営トップがTPM実施を決定し、全社員向けのTPM実施宣言文を作成します。
その後、全体集会やビデオメッセージなどを通じて宣言します。
具体的な宣言の例としては以下のようなメッセージが考えられます。
「当社は、2024年4月1日より全社を挙げてTPM活動に取り組みます。この活動を通じて、生産性の向上、品質の改善、コストの削減を実現し、お客さま満足度の向上と企業価値の最大化を目指します。全従業員の積極的な参加を期待します。」
宣言を行う際の注意点として、具体的でわかりやすい表現を使用し、従業員からの質問に答える機会を設けるようにしましょう。
これにより、TPM活動の意義と目的を全従業員が理解しやすくなり、活動への参加意欲を高めることができます。
次のステップは、TPM導入のための社員教育とキャンペーンです。
教育とキャンペーンの目的は、TPMの概念と必要性を全従業員に理解してもらい、TPM活動への参加意欲を高めることにあります。
実施方法としては、まず階層別のTPM教育プログラムを作成します。
例えば、管理職向けにはTPMの経営戦略上の位置づけや推進方法に関するワークショップを、現場作業者向けにはTPMの基本概念と自主保全活動に関する研修を受けてもらうというようなプログラムが考えられます。
また、社内報やポスターを活用した啓発活動も効果的です。
例えば、「TPMで変わる私たちの職場」をテーマにしたポスターコンテストを開催して従業員の関心を引くという工夫ができます。
さらに、他社や自社の他部門におけるTPM成功事例を紹介することで、活動の効果を具体的にイメージしてもらうことが可能です。
教育と啓発活動を実施する際の注意点としては、各階層の役割と責任を明確にすること、そしてわかりやすい言葉と具体例を用いて説明することが挙げられます。
この2点に気を付けることによって、全従業員がTPMの意義を理解し、自分たちの役割を認識することができます。
3つ目のステップは、TPM推進組織の確立です。
このステップの目的は、TPM活動を効果的に推進するための体制を整え、部門間の連携を強化することにあります。
具体的な実施方法としては、まず社長直轄の組織としてTPM推進本部を設置し、全社的なTPM活動の指揮をとる役割を持たせます。
次に、製造部門や管理部門など、部門別の推進委員会を組織します。
さらに、設備保全部会や品質保証部会といった専門部会を設置し、特定の課題に焦点を当てた活動に取り組みます。
このような組織構成により、全社的な方針の徹底と各部門の特性に応じた活動の両立が可能となります。
また、専門部会を設けることで、技術的な課題にも取り組むことが可能です。
TPM推進組織を確立する際の注意点としては、各組織の役割と権限を明確にすること、そして定期的な会議と報告体制を確立することが重要です。
これにより、活動の進捗状況を常に把握し、必要に応じて迅速な対応を取ることができます。
4つ目のステップは、TPM基本方針と目標の設定です。
このステップの目的は、TPM活動の方向性を明確にし、具体的な目標を設定して進捗を管理することにあります。
実施方法としては、まず中長期経営計画との整合性を確認したうえで、TPMの基本方針を策定します。
例えば、「全員参加でムダゼロ・故障ゼロの理想工場を実現する」といった方針が考えられます。
次に、この基本方針に基づいて具体的かつ測定可能な目標を設定します。
例えば、「設備総合効率を現状の65%から85%に向上(3年以内)」「品質不良率を1.5%から0.5%に低減(2年以内)」「労働生産性を20%向上(3年以内)」といった目標が挙げられます。
TPM基本方針と目標を設定する際の注意点は、目標は具体的で測定可能なものにすること、そしてチャレンジングかつ達成可能な水準に設定することです。
これにより、従業員のモチベーションを高めつつ、着実な成果につなげることができます。
5つ目のステップは、TPMマスタープランの作成です。
このステップの目的は、TPM活動の全体像と推進スケジュールを明確にし、リソースの適切な配分を計画することにあります。
実施方法としては、まずTPM活動の全体スケジュールを作成します。
一般的には、準備期、導入期、展開期、定着期の4つの段階に分けて計画します。
次に、部門別・専門部会別の活動計画を策定し、活動に必要なリソースである人員と予算、設備の洗い出しと配分計画を作成します。
例えば、3年間のマスタープランを作成する場合、1年目を準備期と導入期、2年目を展開期、3年目を定着期とし、各期間で重点的に取り組む活動を明確にします。
準備期では推進組織の確立や基本方針・目標の設定、導入期ではモデルライン活動や自主保全ステップ1-3の実施を計画する、といった具合に決めていきます。
マスタープラン作成の注意点としては、計画にフレキシビリティを持たせ、必要に応じて修正できるようにすること、そしてマイルストーンを設定して進捗を管理しやすくすることが挙げられます。
この2点に気を付けることにより、環境の変化や予期せぬ問題に柔軟に対応しつつ、着実に活動を進めることが可能です。
6つ目のステップは、TPMキックオフです。
このステップの目的は、TPM活動の本格的な開始を全社に周知し、従業員のモチベーションを高めることにあります。
実施方法としては、まず全社員参加のキックオフ会を企画し、参加を呼びかけ企画通りに会を開催します。
具体的な会の流れとして例を挙げると、はじめに社長によるTPM宣言と決意表明、各部門長による活動計画を発表します。
その後、TPMの旗の掲揚式を行い、最後に全員での記念撮影と懇親会を実施するといった流れが考えられます。
キックオフ会を成功させるための注意点としては、参加者全員が一体感を持てるようなプログラムを企画すること、そしてメディアへの公開を検討して社外へのアピールも考慮することが挙げられます。
これにより、TPM活動への参加意識を高め、社内外にTPMへの取り組みをアピールできます。
最後のステップは、TPM活動の展開と定着です。
このステップの目的は、TPM活動を全社的に展開して継続的な改善を実現すること、そしてTPMを企業文化として定着させることにあります。
実施方法としては、まずモデルラインでの活動を開始して成果を可視化した後、段階的に全社展開を進めていきます。
また、定期的な進捗確認と成果発表会を開催し、活動の進捗状況と成果を共有します。
さらに、TPM診断・表彰制度を導入し、優れた取り組みを評価・表彰することで、モチベーションの維持と向上を図ります。
具体的な展開例としては、1年目にモデルライン1ラインで活動を開始し、2年目に3ライン追加、3年目に全ライン展開完了といったスケジュールが考えられます。
また、月次で進捗会議を開催し、四半期ごとに成果発表会を実施、さらに年1回のTPM大会で優秀事例を表彰するといった具合です。
TPM活動の展開と定着を進める際の注意点は3つあります。
1つ目は、小さな成功事例を積み重ねてモチベーションを維持すること。
2つ目は、問題点や課題を迅速に把握し、対策を講じること。
そして3つ目は、定期的に活動を見直し、必要に応じて改善することです。
これにより、TPM活動を一過性のものではなく、継続的な改善活動として定着させることができます。
TPM活動によって故障やロスの削減に成功した企業の事例については以下の記事で紹介しています。
>>TPM活動の取り組みで故障やロスの削減に成功した事例10選
今回ご紹介したTPM活動の7ステップは、準備から定着まで体系的にTPMを導入・展開するためのロードマップです。
各ステップを着実に実行していくことで、TPM活動を成功に導き、生産性向上と設備効率化を実現できます。
TPMの目標を達成するための1つの取り組みとして、クラウド型保全システム「MENTENA(メンテナ)」の導入もぜひご検討ください。設備の点検、保全、改善活動をサポートし、現場の知識や経験をデジタル化してチーム全体で共有することで、保全の質や効率を向上させます。TPM活動の実践においても効果的にサポートします。
執筆者
MENTENA編集部
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