お役立ち記事
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2024.08.26
工場内の機械や設備を正常な状態に保つ設備保全は、製造業において非常に重要な業務です。しかし、重要性は理解できていても、実際に取り組むうえでは課題に直面することもあるでしょう。こちらの記事では、設備保全の課題をテーマに、基本的な考え方や目的、解決方法などについて詳しく説明します。自社の設備保全業務が正しく運用できていない企業さまは、ぜひこの記事をお役立てください。
目次
そもそも設備保全とは、工場にある生産機器や電子機器にトラブルが起きないように、定期的に点検したり修理したりする業務のことです。仮に生産ラインに不具合が生じれば、納期の遅延や不良品増加を引き起こす可能性も。だからこそ、利益を上げ続けるには、生産ラインがストップしないよう機械や設備を常に正常に稼働させることが重要です。なお、設備保全には予防保全・事後保全・予知保全という3つの考え方があります。いずれも機械や設備の状態を保つという意味では同じですが、点検・修理する方法と時期が異なります。
予防保全とは、立案した保全計画に従い点検や修理、部品の交換などを行うこと。決められた時期と内容に沿って点検を行うため、機械や設備の故障を未然に防げるのがメリットです。予防保全には、故障の有無に関わらず定めた期間で部品を交換する「時間基準保全」と、部品の劣化状態を把握して必要な部品を交換する「状態基準保全」があります。
予防保全は、機械や設備が故障する前に部品を交換するため安定性を確保できるのがメリットですが、交換するべき時期の判断を誤った場合に余計なコストがかかるのがデメリットです。費用を抑えるには、部品の使用環境・条件を見極めながら適切に点検や修理を行う必要があります。
事後保全は、機械や設備に不具合が生じてから対応する設備保全のこと。事後保全では突発的に起きたトラブルに対策を講じるので、通常の生産を維持するのが困難です。万が一、生産ラインを完全に停止しないといけない状況に陥れば、企業の損失にも直結します。
日常的な点検に時間やコストがかからないのはメリットといえますが、トラブルの発生状況によっては一刻を争う事態にも発展しかねません。故障原因を見極めたのちに必要な部品を調達し、取り替える必要があるため、復旧までの時間が長引きやすいのもデメリットです。
予知保全は、IoTやAIの導入により機械や設備の状態を監視し、不具合の予兆が現れたタイミングで行う設備保全のこと。近年では、センサーや通信技術の発展に伴い、設備に関するデータをリアルタイムで取得できるようになっています。部品の寿命を見極めた適切なタイミングで保全業務ができるため、コストを無駄にすることなく生産ラインの安定性を確保できるのが大きなメリットです。
設備保全と似たような言葉に、保守やメンテナンスといった単語があります。いずれも機械や設備を点検・修理するという意味では同じですが、生産ラインの安全運用を目的としている設備保全とは異なり、保守やメンテナンスには不具合に対して整備・修繕を行う意味合いが含まれています。設備保全と保守・メンテナンスに明確な違いはないものの、機械や設備の安定性を確保する方法が若干異なります。
設備保全に取り組む目的は、大きく4つあります
設備保全の実施は、生産ラインの安定性を維持・確保するために必要です。なかでも量産部品を製造している企業さまは、機械や設備の稼働停止が多額の損失と信用の低下に直結。復旧や今後の対策にも追われ、多大なコストと時間を要することが想定されます。また、仮に発生した設備不良が人命に関する事故であった場合には、企業の存続すら危ぶまれるかもしれません。設備保全は、こういった事態を防ぐための業務です。適切に実施することで生産ラインの安定稼働が実現するほか、企業に対する信頼性の確保、ひいては技術者の命を守ることにもつながります。
製品の質を担保するには、機械や設備が正常に稼働していることが大前提。機械や設備に不具合がある状態では、不良品が発生しかねないからです。仮に不良品の発生に気付かないまま生産が進めば、納期遅延に伴う機会損失や自主回収によって多大な損害を被る可能性があるでしょう。また、製品の質にばらつきがあっては、顧客満足度を高めることもできません。設備保全は、不良品の発生を防ぎ売上や顧客満足度の向上に寄与するという点で、重要な役割を担っています。
設備保全は、ライフサイクルコストの最適化にも役立ちます。製造業におけるライフサイクルコストとは、製品のライフサイクル(研究や開発、生産、流通など)で発生する費用のこと。製造の現場でライフサイクルコストの最適化を図るには、機械や設備、部品の寿命を最大限に伸ばしつつ、適切なタイミングで点検・保守・修理を行う必要があります。設備保全で機械や設備、部品の劣化状態を把握できるようになれば、コストの削減に大きく貢献するでしょう。
設備のダウンタイムを最小化するのも、設備保全の目的。どれだけ日常的に機械・設備を管理していたとしても、ヒューマンエラーなどで予期せず稼働停止しなければならない場面が訪れるからです。停止時間が長引くほど生産効率は悪化し、サプライチェーン全体にも影響を及ぼしかねません。しかし、設備保全が適切に行われていれば、マニュアルに基づいたスムーズな復旧が可能に。設備停止による損害を最小限に食い止められるでしょう。
安定稼働や品質の担保、企業の信頼性向上などに寄与する設備保全ですが、実施にいたっていない企業も少なくありません。ここでは、設備保全の実施が困難となっている背景・理由とともにその解決策を提案します。
人員不足は、特に中小企業でよく見られる問題です。一定の事業規模を有する大企業では設備保全に特化した技術者を確保する余裕がありますが、技術者ひとりあたりの作業負担が大きい中小企業では、通常業務を捌く(さばく)ので精いっぱいという状態が起きています。設備保全を外注する余裕もなく、事後保全で対応するしかない状況です。特に、日本では少子高齢化による人手不足が深刻化しています。
人員不足を解消するには人を採用するほかありませんが、自社で教育しノウハウを蓄積させるには時間もコストもかかるでしょう。さらに教育過程で担当者が退職した際には、教育に費やしたコストを回収できないまま振り出しに戻る可能性も。
人員不足で設備保全に取り組めていない場合は、今いる作業員が機械や設備の違和感を見逃さないことが重要です。生産ラインが停止する前は、異音や異臭、何かがいつもと違うといった予兆が見られます。設備保全は大がかりな業務ととらえられがちですが、まずはちょっとした確認を怠らない程度で十分です。技術者一人ひとりの小さな対策を積み重ねることで、人員不足の課題は解決できる可能性があります。
人員不足にも通じるところですが、日々の生産目標に追われて時間が取れないことも、設備保全に取り組めない理由です。特に食品工場では、多品種少量生産や短納期の対応など、顧客のニーズが多様化しています。しかし、忘れてはならないのは、生産ラインが停止すれば、結果として生産量の低下やロス時間の発生を引き起こすということです。設備保全に取り組むことは、結果として生産性を向上させることにもつながります。
とはいえ、生産目標の達成を優先するためにどうしても自社で設備保全の時間が取れないケースもあるかもしれません。そういった場合は、設備保全に特化した企業に業務を依頼するのも1つの手です。たしかにコストはかかりますが、設備保全を外注できれば技術者は安心して生産性を上げるための業務に集中して取り組めるようになります。人材や時間不足といった問題を解決するために有用な方法です。
設備保全のノウハウが不足していることも、企業が設備保全に取り組めない理由の1つです。近年では、生産設備のオートメーション化に伴い、設備保全に必要な知識や技術が高度化。専門性の高い知識やスキル、経験を有したエンジニアが求められています。しかし、要件を満たす人材は、少子高齢化によってますます減少していく一方です。
企業がノウハウ不足の課題を解決するには、人材教育に力を入れ、業務に携わる技術者全員の知識・スキルをアップさせる必要があります。もしくは、設備保全のやり方を予防保全・事後保全から予知保全に切り替えていくのも効果的でしょう。
設備保全を最適化するにはいくつかの方法があります。ここでは、3つの方法をご紹介しましょう。
IoTとはInternet of Thingsの略称で、モノをインターネットに接続する技術を意味します。IoTを活用すれば、製造現場で使われる機械や設備、またはそれらに取り付けるセンサーをインターネットに接続できるように。これにより、稼働状況の分析や機械・設備の故障を予測できるというわけです。本当に必要なときにだけ設備保全を行う予知保全を実現するには、IoTの導入が欠かせません。機械や設備に取り付けたセンサーで生産ラインの状態を常に監視しておけば、設備保全にかかるコストや時間を削減しつつ、稼働の安定性を確保できるようになるでしょう。
AIの活用もまた、IoTと同じくらい重要です。AIとは、人間が持つ知識やスキルを人工的につくる技術のこと。AI技術の進化は目覚ましく、近年では設備保全に導入することで故障や不具合が起きる前段階での予知が可能になっています。部品の修理や交換が必要なタイミングで対応できれば、業務の効率化につながるでしょう。
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「MENTENA(メンテナ)」とは、クラウド型の設備保全システムのこと。製造業での設備保全はデータ整理や分析、保全計画の立案、管理者のチェック・承認に至るまでいくつもの工程があります。すべての工程をエクセルや紙の台帳などで管理することも珍しくはありませんが、点検票に都度記入したり、取り込んだデータをプリントアウトしたりという作業に大幅な時間を費やすのはもったいないことです。MENTENA(メンテナ)は、パソコンやモバイル端末(スマートフォン、タブレット)から点検・作業結果の登録ができ、現場から簡単に確認・報告作業が行えます。また、写真・資料を一括でアップロードし、すぐさま現場の作業員と管理者、経営者が情報を共有できる仕組みになっています。ほかにも、故障や稼働率といった重要なデータを蓄積して見える化できることから、予知保全の実現も可能。運用効率の最大化を図れると、幅広い業界・業種で導入が進められています。
設備保全は製造業で行う重要な業務の1つですが、人員やコストなどに課題を抱えている中小企業では、思うように取り組みを進められていないのが現状です。しかし、適切な設備保全を実施すれば、質の高い製品を安定的に供給できるようになります。設備保全に取り組むうえで何らかの課題を抱えている企業さまは、ぜひMENTENA(メンテナ)をご検討ください。MENTENA(メンテナ)は、設備保全の見える化で時間やコストの大幅な削減に寄与します。
執筆者
MENTENA編集部
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