2025.01.17
中小企業の製造業でも、働き方改革が生産性向上や人材確保の要として重要視されています。しかし、限られた予算や人員体制のなかでどのように取り組むべきか悩む企業も少なくありません。
この記事では、製造業における働き方改革の成功事例を通して、具体的な実践方法や助成金制度の活用法、労働環境の改善による効率化など、効果的なアプローチをわかりやすくご紹介します。持続可能な改革の実現に向けて、解決策とヒントをご提供します。
目次
少子高齢化での労働力不足や従業員の定着率低下を背景に、製造業でも働き方改革が重要視されています。
特に中小企業では、大企業に比べてリソースが限られるため、労働生産性の向上や現場作業の効率化が求められています。適切な改革を行うことで、従業員のワークライフバランスが改善され、モチベーションの向上と離職率低下が期待されます。
さらに、働きやすい環境を整備することが、企業の競争力向上や持続的成長にも寄与する重要な要素となっています。
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中小企業では、限られた予算と人員で働き方改革に取り組む必要があります。特に、設備投資やシステム導入などにはコストがかかるため、段階的な導入や既存設備の最大活用が求められます。
また、従業員の意識改革も重要であり、業務改善や効率化の目標を具体的に示すことで、現場全体の協力が得られやすくなります。中小企業ならではの柔軟な対応と、地道な取り組みが成功の鍵となります。
多くの企業が賃金UPやキャリア支援など、さまざまな取り組みから働き方改革に動き出しています。
中小製造業では、技術者の生産性を高めるためにシフト管理の柔軟化やデジタル技術の導入が進められています。シフト管理では、技術者が自己管理しやすい体制を整え、ワークライフバランスを改善した結果、技術者の満足度が向上しました。
また、生産ラインにIoTシステムを取り入れることで作業の無駄が削減され、在庫管理も効率化しました。これにより、作業時間の短縮とコスト削減が実現されています。
鹿児島製茶株式会社では、新茶の季節である4〜5月とお中元・お歳暮の時期が忙しく、繁閑の差が激しいため「1年単位の変形労働制」の勤務スタイルを採用しています。
しかし繁忙期には休みが不規則になるどころか、過度な連勤が続いてしまうケースが多く、年次有給休暇の取得者が少ない、結婚・妊娠・出産を機に離職という課題がありました。
そこで、ワークライフバランスの見直しとして2011年頃から働き方改革に取り組みました。まず初めに、全従業員を対象として、5日間の連続休暇を取得できる「リフレッシュ休暇」と半年に2日、季節ごとに休暇を取得できる「シーズン休暇」を導入しました。
また、育休明けの復帰施策として、無理のない範囲で働けるように「短時間制社員制度」という独自の制度も導入しました。
その他、「子の看護休暇」の対象年齢の拡大、「時間単位の年次有給休暇制度」「育児目的休暇」なども導入し、より快適かつ柔軟な労働環境を目指して、「ノー残業デー」の制定、テレワークの実施などに努めたことにより、時間外労働時間も月平均5時間まで削減することができ、働き方改革の実現に成功しています。
(出典)
厚生労働省 | 鹿児島製茶株式会社
快適で安全な職場環境を整えることは、製造業における働き方改革の基礎です。リフレッシュスペースや空調システムの導入により、技術者がリラックスできる場が提供されるとともに、長時間の立ち仕事や騒音からの負担軽減に役立っています。
また、健康維持のために定期健康診断や健康サポートプログラムを導入することで、技術者の健康意識が高まり、病気予防にもつながっています。
ライオンパワー株式会社(石川県)では、従業員の残業時間削減と有給取得の増加を目的に、働き方改革関連法に先立つ準備を行いました。
残業時間をポイント制にして賞与に反映する仕組みを設け、従業員が自分の残業時間を確認できるようにした結果、残業時間は2016年から2年間で40%減少し、深夜残業も75%削減されました。また有給取得率も向上し、労働環境が改善されています。
米五株式会社(福井県)は、社員の健康維持を重視し、メンタルヘルスをサポートする環境づくりに注力しています。特に残業時間の削減と一斉休暇日設定で休息機会を増やし、勤務の柔軟性を高めました。
取り組みの結果、社員の疲労が減少し、職場環境も改善。企業内でのコミュニケーションの円滑化にもつながり、従業員の定着率向上にも寄与しています。
(出典)
中小企業庁 | 働き方改革の好事例
ITツールの導入と業務の効率化は、製造業における働き方改革の重要なポイントです。業務のデジタル化と自動化を通じ、労働負担を軽減しつつ、作業の精度やスピードを向上させることで、全体的な生産性の向上が図られます。
ここでは、業務の自動化とデジタル化の導入例、およびITツールを活用した効率化事例について詳しく解説します。
株式会社サカタ製作所 では、基幹業務システムのコンピュータを刷新し、受注状況を踏まえた最適な計画を作成するとともに、見積りシステムを新たに開発し、Web上に公開することで顧客による見積もりも可能にしました。
これらの取り組みの結果、これまで3日かかっていた作業が5分に短縮。1人当たりの月平均残業時間が、約18時間から約1時間に縮減という大きな「働き方改革」に成功しました。
(出典)
中小企業庁 | シリーズ「働き方改革」の成功例(事例集)
リスキリングプログラムを実施し、IT技術やデータ分析スキルを従業員に提供している企業もあります。
これにより、現場での効率化が図られ、キャリアアップの機会も提供されています。このような教育体制の整備が、従業員の定着率向上に貢献しています。
定期的なキャリア面談や昇進機会の提供によって、従業員が自身の成長を感じながら働ける環境が整備されつつあります。
ある企業では、キャリア目標を明確化し、実績に応じたキャリアアップの機会を用意しています。これにより、従業員の離職率が下がり、職場のモチベーションも向上しています。
持続的な働き方改革には、長期的な視点での計画と外部からの支援が欠かせません。まず、企業はPDCA(計画・実行・確認・改善)サイクルを活用して計画的に改革を進め、定期的に見直しを行うことで、現場の変化や従業員の意見を柔軟に取り入れることが重要です。
また、各種助成金や補助金などの公的支援制度も積極的に活用し、財政的な負担を軽減することができます。
例えば、「働き方改革推進支援助成金」などは、中小企業が働き方改革に取り組む際の強力なサポートとなります。これらのサポートを最大限に活用しながら、企業は従業員の働きやすい環境づくりを継続的に推進することが求められます。
国が提供する「働き方改革推進支援助成金」を利用して、効率的な改革を実施した事例があります。助成金を活用し、設備投資を実現した企業では、生産性が約15%向上し、従業員の働きやすさも大幅に改善されました。助成金制度を適切に活用することで、限られた予算内での改革が可能です。
PDCAサイクルを取り入れて、定期的な改善を行っている企業があります。計画から実施、結果の評価と見直しを通じて、長期的な視点での働き方改革を実現。現場からのフィードバックを取り入れながら、継続的に業務効率が改善されていることが確認されています。
中小企業の製造業における働き方改革の進行状況と具体的な事例を紹介してきました。働き方改革は、生産性の向上、人材の確保、そして労働環境の改善に直結し、企業の競争力強化に寄与する重要な施策として位置づけられています。
特に、柔軟な勤務制度、デジタル技術の導入、健康管理の強化などが効果的であると示されています。これらの改革を深化させ、さらに助成金制度などの支援を活用して、持続可能な改革を推進していきましょう。
執筆者
MENTENA編集部
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