お役立ち記事
お役立ち記事
2024.11.06
製造業や設備管理に関わる方々のなかには、故障やロスを減らすためにTPM(Total Productive Maintenance)活動に取り組むべきか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、TPM活動における故障とロスの考え方から、TPM活動によって故障やロスの削減に成功した企業の事例までをご紹介します。
ぜひこの記事を参考にTPM活動を導入して、故障やロスの削減を成功させてください。
また、TPM活動の概要、現代の製造業に適したTPM活動を行うための課題と解決方法については以下の記事で紹介していますので、ぜひご一読ください。
>>製造業のTPM活動とは?時代遅れといわれる理由と解決策
目次
TPM活動(Total Productive Maintenance)は、故障やロスを削減することで、生産効率の向上を目指す取り組みです。
もう少し具体的にいうと、予防保全を実施して故障を防ぐとともに、ロスを細かく分析し、改善策を見つけて実施します。
このアプローチにより、無駄を削減し、設備の稼働率を最大限に引き上げることが可能です。
どの部分に改善の余地があるのかを見つけやすくするためには、まず「故障」と「ロス」の違いを明確に把握することが大切です。
「故障」とは設備が正常に動かなくなり、生産が停止してしまう状態を指します。
TPM活動では、設備の故障を単なる偶発的な出来事としてではなく、予防可能で管理すべき課題としてとらえます。
故障は生産性を低下させるだけでなく、品質問題や安全リスクにもつながる可能性があるため、その予防と迅速な対応が重要です。
一方、「ロス」は単に設備の故障だけでなく、生産プロセス全体に存在する非効率性を指します。
設備が止まらず動いていても、予定よりも生産効率が下がり、生産性が低下していればロスに含まれます。
TPM活動では、生産性を阻害する要因である「ロス」の削減に取り組みます。
ここからは、故障とロスそれぞれの細かい種類について、詳しく説明していきます。
TPM活動では、故障を以下のように5つに分類します。
これらの故障の種類を理解することで、効果的な予防保全計画を立てることができます。
突発故障とは、予期せず突然発生する故障です。
例えば、機械の突然の停止や部品の破損などが該当します。
これらの故障は生産ラインを完全に停止させる可能性があり、緊急対応が必要となります。
対策としては、予備部品の確保や迅速な対応体制の構築が重要です。
劣化故障とは、時間の経過とともに徐々に進行する故障です。
例えば、機械部品の摩耗や腐食などが挙げられます。
多くの場合、定期的な点検とメンテナンスにより予防することが可能なので、施策としては定期的な点検と部品交換のスケジュールを組むことが効果的です。
初期故障とは、新しい設備や部品を導入した直後に発生する故障です。
原因の多くは、設計上の問題や製造時の欠陥です。
対策としては、適切な試運転期間を設けることで、問題を早期発見して対処することが重要です。
間欠故障とは、断続的に発生する故障です。
例えば、特定の条件下でのみ発生する電気的な不具合などが該当します。
この故障は、原因の特定が難しい場合があります。
そのため対策としては、詳細な分析と根本原因の追究が必要となります。
二次故障とは、他の故障や問題が原因となって発生する故障です。
例えば、1つの部品の故障が他の部品に過度の負荷をかけ、それが新たな故障を引き起こす場合があります。
このタイプの故障は、初期の問題を迅速に解決することで予防できます。
次にロスの分類について説明します。
TPM活動では、以下のような6種類のロスに着目します。
設備故障によるロスとは、設備の故障により生産が停止することで発生するロスを指します。
もっとも直接的でわかりやすいロスの1つです。
このロスが発生することによる影響は、単なる生産停止時間だけでなく、再稼働までの調整時間や品質への影響などにまで及びます。
設備故障によるロスを削減するためには、予防保全活動の強化や故障の早期発見・早期対応のシステム構築が効果的です。
段取り・調整によるロスとは、生産品目の切り替えや設備の調整に要する時間的なロスのことです。
この作業時間は必要不可欠ではありますが、最小限に抑えることで生産性を向上させられます。
具体的な対策としては、SMED(Single Minute Exchange of Die)などの手法を用いて、切り替え時間の短縮に取り組むことができます。
空転・小停止によるロスとは、設備は稼働しているものの、実際には生産が行われていない状態によるロスです。
具体的には、材料の詰まりや一時的な不具合による短時間の停止などが該当します。
個々の影響は小さくても、頻繁に発生すると大きなロスとなります。
空転・小停止によるロスの削減には、設備の細かな動作分析と改善が必要です。
例えば、センサーの追加や制御プログラムの最適化により、小さな不具合を自動的に検知し対応することで、停止時間を最小限に抑えることができます。
速度低下によるロスとは、設備が本来の能力を下回る速度で運転されることによるロスです。
原因としては、設備の経年劣化や不適切な調整、オペレーターのスキル不足などが考えられます。
対策としては、設備の適切なメンテナンスとオペレーターの技能向上が重要です。
定期的な設備の点検・調整と、オペレーターへの継続的な教育訓練により、設備の本来の能力を最大限に引き出すことができます。
不良・手直しによるロスとは、品質不良品の発生や、その修正に要する時間と資源によるロスです。
直接的な材料や時間のロスだけでなく、顧客満足度の低下にもつながる重要な問題です。
このロスの削減には、品質管理システムの強化が不可欠です。
統計的品質管理(SQC)や自動検査システムの導入により、不良品の発生を早期に検知し、迅速な対応をすることが可能となります。
また、発生した不良の根本原因を分析し、再発防止策を講じることも重要です。
立上げロスとは、生産開始時や設備再稼働時に、安定した生産状態に至るまでの間に発生するロスです。
この期間中は製品品質が安定せず、生産効率も低下します。
立上げロスの削減には、標準作業手順の確立と徹底が効果的です。
最適な立上げ手順を確立し、それを確実に実行することで、安定生産状態への移行を迅速化できます。
また、設備の温度管理や初期調整の自動化なども、立上げロスの削減につながります。
(出典)
「TPM」とは? | 公益社団法人日本プラントメンテナンス協会
ここからは、TPM活動によって実際に故障・ロスの削減に成功した企業の事例を5つ紹介します。
株式会社キョーワは、国内で活魚車の製造シェア70%を誇る企業です。
TPM活動に取り組むことで大幅な生産性向上と納期短縮に成功しました。
同社では、活魚車の主要工程が多岐にわたり、熟練作業の必要性から業務改善が難航していました。
そのため、意識改革セミナーや詳細な工程分析を通じて、問題の「見える化」を実現。
これにより、ボトルネックの特定が可能となり、工程の効率化を進めた結果、納期を30%以上削減する見込みが立ちました。
(出典)
業務改善支援(見える化:TPM)事例 | 思考プロセス研究所|福岡の人材育成・業務改善支援
住友林業クレストは、2014年からTPM活動を開始し、全社員参加で生産の効率化とロス削減に取り組んでいます。
活動の柱として「全員参加」「自主保全」「ロス・ゼロ」を掲げ、従業員の自主性を重視した改善活動を推進しています。
また、設備の保全活動と徹底した安全教育により、設備故障の予防と労働災害ゼロを目指し、品質向上と安全な職場環境の両立を目指しています。
この取り組みにより、製造現場全体での生産性向上と品質の安定に成功しました。
(出典)
TPM活動 | 住友林業クレスト株式会社 – 「木」を生かしたものづくり。
敷島製パン株式会社は、省人化に対応するため、従来のTPM活動を改め「新TPM活動」を開始しました。
同社の犬山工場では「コア・ノンコア分析」を導入し、付加価値のない作業を削減。
設備保全に関しては、自動化と点検方法の工夫により作業の省力化を図り、生産性の向上を目指しています。
さらに、工場間のばらつきを解消するために知見を共有し、全工場のレベルアップを図ることで、安定した製品供給体制を強化しています。
(出典)
敷島製パン株式会社 | 事例 | 日本能率協会コンサルティング
三菱ケミカル株式会社の豊橋事業所は、2009年からTPM活動を本格化。
その結果、設備故障件数を14分の1に減少させる成果を上げました。
この成功の裏には、オペレーターと専門保全員が協力し合う体制や、製造部長と課長の活動を連携させる独自のアプローチが存在しています。
さらに、新たに「保全道場」を設立して新人教育に力を入れ、持続可能な活動を推進しています
(出典)
三菱ケミカル株式会社 | 事例 | 日本能率協会コンサルティング
昭和電工株式会社の川崎事業所では、10年間のTPM活動を通じて、設備の重大トラブルが年間数十件から4分の1に減少しました。
この成果に伴い、顧客からの品質クレームも年間28件からわずか2件にまで減少。
3年間でコスト削減額は23億円に達しました。
具体的な活動としては、3年から4年ごとに設定された明確な目標、管理職によるPDCAサイクルの評価、戦略的な教育訓練の実施が挙げられます。
また、自主保全を中心とした現場の小集団活動を可視化して意識統一を図ることで、全体の効率と品質の向上に成功しました。
(出典)
生産保全(PM)は何をする?4つの基本活動と応用編を紹介 – 株式会社FAプロダクツJSS事業部|関東最大級のロボットSIer
TPM活動を通じて故障やロスの削減に成功した5社の事例を通して、故障やロスの削減がどれほど企業の生産性向上につながるかご理解いただけたでしょうか。
故障やロスを「見える化」し、予防保全活動や自主保全、効率的な改善活動などを実施することで、各企業が生産性向上や安全性の強化、納期短縮といった成果を上げています。あらためてTPM活動の進め方やポイントを具体的に知りたい方は以下の記事もご覧ください。
>>TPM活動の進め方7ステップ|効果的な導入と実践のポイント
この記事の事例のように、自社の生産現場でもTPM活動を導入して、ロス削減と効率改善を目指したいという企業さまは、クラウド型の設備保全システム「MENTENA(メンテナ)」の導入もご検討ください。
設備保全データの一元管理により、業務の効率化や情報共有が容易にでき、予防保全活動や改善活動をスムーズに進めるサポートをして、故障やロスの削減に貢献します。
執筆者
MENTENA編集部
製造業向けの業務効率化・業務改善に役立つコラムやセミナー、および有益な資料を通じて、実践的な情報を提供しています。最新のツールの使い方や業界の情報・トレンドを継続的に発信することで、製造業の皆様にとって信頼できる情報源となることを目指しています。
© Copyright 2024 YACHIYO Solutions Co., Ltd.
All Rights Reserved.