2025.02.25
設備台帳は、工場での効率的な設備管理を行うために欠かせないツールです。
この記事では、エクセルを利用した設備台帳のメリットやデメリット、活用方法を詳しく解説します。また、エクセルで設備台帳を作成する手順やエクセル管理の課題を克服する方法も紹介します。
目次
設備台帳とは、企業や組織で使用される設備や資産を管理するための重要な資料のことを指します。具体的には、設備の種類、導入日、取得価格、メンテナンス記録などを記載し、一元的に管理・把握するためのツールです。
設備台帳は、設備のライフサイクルや使用状況を詳細に把握し、効率的な設備運用を実現するために作成されます。
工場内に設置されている生産設備がどの程度使用されているか、また次の点検時期がいつになるのかといった情報を、設備台帳を活用することで簡単に確認することができます。
このように設備台帳は経営資源の可視化を目指した管理ツールとして、多くの企業の設備管理部門で活用されています。
設備台帳は、その名の通り設備に関する情報を詳細かつ正確に記録することで、日々の業務をスムーズに進めるための基盤を提供します。その主な役割を以下に示します。
役割 | 具体的な内容 |
設備情報の集約 | 設備の導入時期、設置場所、担当者情報を一元管理し、効率的に情報を把握する。 |
保守・点検のスケジュール管理 | 定期的なメンテナンスや点検スケジュールを記録し、未実施の作業を防止する。 |
トラブル時の迅速な対応 | 故障やトラブル発生時に迅速に対応するための情報基盤として活用。 |
法令遵守の証拠 | 設備の管理状況を記録することで、安全性確保や法令遵守を証明する資料となる。 |
これらの役割を通じて、設備台帳は設備管理における効率性の向上とリスク回避を同時に実現するための極めて重要な要素として機能しています。
設備台帳をエクセルで作成することでどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、エクセル管理で得られるメリットについて紹介していきます。
エクセルはMicrosoft Officeの一部として多くの職場で導入されており、特別なソフトウェアを購入する必要がありません。
結果として、初期投資が少なくて済むため、業務効率化やペーパーレス化の第一歩として着手しやすいです。エクセルが社内で使える環境さえあれば、新たな費用負担が発生しません。
エクセルではセルや表を自由に配置したり、色付けやマクロを利用することで自分の業務に合った独自の設備台帳を作成することが可能です。
他の専門ツールよりも柔軟性が高く、業務の変化や設備の増加にも柔軟に対応できるのが大きな魅力です。
日本では多くの企業や教育機関でエクセルを使用しているため、操作に慣れている人が多いのが利点です。
新たなソフトウェアを導入する際のような社員へのトレーニングや習得時間が最小限に抑えられるため、すぐに導入して活用を始めることができます。
設備台帳と合わせて、設備保全エクセルツールを使えば効率的に設備保全を進行管理できます。
一方で、設備台帳をエクセル管理する際には以下のような注意点もあります。
エクセルで作成したデータはファイルとしてやり取りを行うため、複数人で同時に作業する場合にデータの衝突や更新内容の混乱が生じる可能性があります。
特に社内の規模が大きい場合や各拠点で共同編集を行う場合には、この問題が顕著になります。
複数人で設備台帳を管理すると、誰が最新の情報を持っているかを調べるのが大変です。
また、間違えて古いファイルを使ってしまうと、最新の設備情報が正確に伝わらないリスクが生じます。クラウドのシェア機能を使うことで一部解消できますが、エクセル単体では対応が難しい場合があります。
メリットであげた「カスタマイズしやすさ」の副作用として、データ分析やメンテナンス計画の自動化といった高度なタスクのために特定の技術者しか管理ができない独自のマクロを組んでエクセル管理をしている場合、属人化リスクが高まります。
もし、作成者が退職してしまうと、マクロの内容が不明となり、運用や修正が困難になります。
エクセルで設備台帳を管理する場合、ファイルが社内メールで共有されることが多く、その際にデータが外部に漏えいするリスクがあります。
また、他の管理ツールと比較して、パスワード保護やアクセス制限の設定が限定的であることから、情報の安全性が十分に確保されにくいと言えるでしょう。
項目 | メリット | デメリット |
導入の手軽さ | 低コストで導入可能 | 特定の場面では専門ツールに劣る |
操作性 | 多くの人が慣れている | 複雑な操作は手間が増える |
データ共有 | シェア機能で対応可能(一部) | 複数人での利用時に混乱が生じやすい |
カスタマイズ性 | 柔軟に設定ができる | 専門知識が必要な場合もある |
セキュリティ | – | 情報漏洩のリスクがある |
これらのメリットとデメリットを踏まえ、エクセルで設備台帳を作成する際には、状況に応じた注意が必要です。
エクセルでの管理に不安を感じる場合、当社の設備管理システム「MENTENA(メンテナ)」であれば、こうしたデメリットを克服し、効率的な設備管理が実現できます。
設備台帳を適切に作成し管理するためには、設備に関する重要な情報を的確に記載する必要があります。この章では、設備台帳に記載すべき必須項目について詳しく見ていきます。
これらの項目を押さえることで、設備管理を効率化し、データの正確性を確保できます。
まず、設備台帳には設備そのものの基本情報を記載することが求められます。これは、設備を正確に特定し、類似の設備と区別するための重要な情報です。以下に、基本情報として記載すべき主要項目を表形式で示します。
次に取得に関する情報も設備台帳に記載する必要があります。取得情報は、設備購入や資産管理の際に重要な役割を果たします。
項目名 | 説明 |
設備名 | 設備を一意に特定するための名称(例:コンプレッサーA001)。 |
設備コード | IDまたは管理番号。社内で設備を識別するための番号。 |
設備カテゴリ | 設備の種類や分類(例:空調設備、製造機器、照明設備など)。 |
製造メーカー名 | 設備の製造業者の名称(例:東芝、パナソニックなど)。 |
型番・製品番号 | メーカーが提供する公式の型番または製品番号。 |
設備の設置場所や設置条件に関する情報は、台帳管理において欠かせない要素です。この情報により、設備が物理的にどこにあるかを明確に把握することができます。
項目名 | 説明 |
取得日 | その設備を購入または入手した日付。 |
購入元 | 設備を購入した販売業者や供給元(例:機械メーカー、小売業者など)。 |
購入価格 | 設備を取得する際にかかった金額。 |
保証期間 | 購入時に付帯されたメーカー保証の終了日。 |
設備の適切な運用を維持するために必要な情報です。特に業務用設備や工場設備では保守・点検情報の記録が不可欠となります。
項目名 | 説明 |
設置場所 | 設備が設置されている具体的な場所(例:工場A、オフィスBなど)。 |
設置日 | 設備が設置された日付。設置工事が伴う場合には完了日を記載。 |
設置条件 | 温度、湿度、高度など設備運用における環境条件。 |
管理担当者 | 設備の運用・保守を担当する社員の氏名または部署。 |
最後に設備の廃棄や除却に関する情報も記載する必要があります。この情報は、設備が不要となった場合や寿命を迎えた際に役立ちます。
項目名 | 説明 |
点検記録 | 過去の点検や保守作業の履歴。点検日や実施内容を記録。 |
点検頻度 | 定期点検を実施すべき頻度(例:3ヶ月に1回、年1回など)。 |
保守業者 | 保守や修理を依頼する外部業者の情報。 |
修理履歴 | 過去に行われた修理や交換に関する記録。 |
設備台帳をエクセルで管理する場合には、新規で作成する方法と既存のツールやテンプレートを活用する方法があります。
エクセルを使って設備台帳を新規に作成する手順は、以下のように進めます。まずは事前に何を管理する必要があるかを明確にし、それを効率的に表現できるフォーマットを設計しましょう。
設備台帳に記載するべき情報(例:設備名、型番、設置場所、購入日、点検履歴など)をリストアップします。この作業は、後々の作成作業やデータ整理の効率を上げるためには欠かせません。
次にエクセルを起動し、新しいスプレッドシートを作成します。以下のような列を設定するのがおすすめです。
列名 | 内容 |
設備名 | 管理する設備の名称(例:冷却装置A) |
型番 | 製品の型番やモデル番号 |
設置場所 | 設備の設置されている場所(例:本社ビル3階) |
購入日 | 設備の購入・導入日 |
点検履歴 | 過去の点検や保守作業の日付と概要 |
これらは基本的な項目ですが、必要に応じてカスタマイズすると良いでしょう。
列に適切なデータを入力し、ファイル名に「設備台帳_YYYYMMDD(更新日)」などの日付を含めて保存します。
ツールやテンプレートを利用する方法は、新規作成よりも作業工数を削減できるメリットがあります。以下はその手順です。
インターネット上には、無料でダウンロード可能な設備台帳のツールやテンプレートが多数公開されています。その中から、自社の業務内容に合ったものを選びましょう。
テンプレートをダウンロードした後、初期設定を行います。テンプレートの一般的な初期設定作業として以下が挙げられます。
ツールやテンプレートを用いて設備情報を入力し、視覚化や効率的な管理ができるよう工夫します。多くの場合、テンプレートにはあらかじめ集計用の関数やグラフ機能が設定されており、データを単純に入力するだけで管理が可能となります。
エクセルを活用した設備台帳の管理は、コストを抑えて手軽に始められる点で実際に多くの企業で採用されています。しかし、管理の規模が拡大したり、リアルタイムなデータ共有や高度なセキュリティが求められる場合、より専門的な設備管理システムの導入が有効です。
すでに市場には、さまざまな設備管理システムが提供されています。例えば、当社の「MENTENA(メンテナ)」は設備管理台帳としての機能のほか、スケジュール管理やデータの一元管理による情報共有、作業履歴の振り返りも容易にできます。
MENTENAの主な機能一覧は以下の通りです。
阪部工業株式会社では、従来、工場内の設備保全記録の情報一元化のためにエクセルを活用していました。しかし、エクセルのデータを同時に複数人が入力・編集することができず、保全履歴を記録する作業に時間を要していました。
MENTENAを導入することで作業効率が向上し、導入から数カ月で保全グループの残業時間が減るなどの成果が出ています。
本事例について詳しくは>>こちら
設備台帳をエクセルで管理することで、導入コストを抑えながら手軽に設備管理を始めることができます。エクセルはカスタマイズ性が高く、既存のテンプレートやツールを活用することで効率的に運用が可能です。
一方で、データ共有やセキュリティリスクなどの課題も存在します。これらの課題を解決するためには、データバックアップや適切なセキュリティ対策を施し、運用ルールを明確にすることが重要です。
また、設備規模や管理の複雑さに応じて、MENTENAをはじめとしたクラウド型の設備管理システムなどを検討するのも有効でしょう。自社のニーズに応じた最適な方法を選び、効率的で安全な設備管理を実現しましょう。
執筆者
MENTENA編集部
製造業向けの業務効率化・業務改善に役立つコラムやセミナー、および有益な資料を通じて、実践的な情報を提供しています。最新のツールの使い方や業界の情報・トレンドを継続的に発信することで、製造業の皆様にとって信頼できる情報源となることを目指しています。
© Copyright 2025 YACHIYO Solutions Co., Ltd.
All Rights Reserved.