お役立ち記事
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2024.08.26
現在、社会問題となっている少子高齢化。多くの日本企業がその影響を受けて、人手不足や後継者の育成問題に悩まされています。製造業界においても大きな課題となっており、人手不足のなか限られた人材を活かして「技術の継承」に取り組まなければならなくなっています。そこで今回は、製造業における技術の継承問題の概要とその対策法についてまとめました。技術の継承を成功させる重要なカギとなるマニュアル作成のポイントも詳しく解説します。
目次
「技術の継承」とは、知識やスキルを後継者に伝えて次世代へと受け継いでいくこと。技術の継承は、企業がこれまでの事業を存続させるだけでなく、これから発展していくためにも必要不可欠です。
まずは「技術」と「技能」の違い、製造業における技術継承の重要性について確認しておきましょう。
同じものとして認識されがちな「技術」と「技能」という2つの言葉。しかし、それぞれの言葉が意味するものは大きく異なります。「技術」と「技能」の意味を十分に理解しておくことで、適切な技術の習得と継承につながるのです。
「技術」とは、ものごとを取り扱うときや処理するときの手段や方法のことを指します。本や言葉などからでも習得できるため、マニュアルに落とし込みやすいところが大きな特徴です。
対して「技能」は、技術を扱うために必要な能力のこと。取り扱う手段や方法がわかっていても、それを使いこなす能力が備わっていなければ実現できません。技術を習得し、多くの経験を積んだ熟練技術者が得ている能力が「技能」なのです。
現場で活躍できるほどの技能を持ち合わせた技術者を育成するためには、技術の継承が必要不可欠。スムーズな技術継承は、早期に技能を身につけた技術者を生み出し、生産性を維持・向上させることにもつながるでしょう。
少子高齢化がより深刻化することで、製造業では若手の人材確保が困難となりつつあるだけでなく、熟練技術者の高齢化も進んでいます。熟練技術者が引退するまでに技術継承できていなければ、自社が保有する技術・技能の消失は避けられません。独自の製造・加工方法が失われることは競争力低下につながり、最終的には企業の存続にも影響を与えるでしょう。
少子高齢化による影響を受けている製造業では、限られた若手人材を単なる労働力として採用するのではなく、技術継承者として育成していく必要があります。また、技術を受け継ぐまでには時間を要するため、急いで伝承しなければいけません。
技術継承に対して早急な対応が求められている製造業ですが、現状では難色を示しているケースが多くなっています。
製造業で技術の継承がうまくいかない4つの理由をまとめました。
高齢化が進んでいる製造業界では、指導できる熟練技術者の退職が重なり指導者不足に陥っているケースがあります。2007年には、1947~1949年の第一次ベビーブームに誕生した団塊世代の人々が定年を迎えて会社を去りました。このときに十分な技術の継承が行えなかった企業では、そもそも専門技術や知識を持つ者が少なくなっている場合があるのです。今後も高齢化が進むことが予想される現代では、指導できる人員がいなくなってしまう前に今ある技術を継承しておく必要があるでしょう。
製造業で技術の継承がうまくいかない2つ目の理由には、指導時間の不足が挙げられます。新しい技術者の確保が難しくなっている製造業界では、比較的簡単な作業から高度な作業までのすべてを限られた人数でこなす必要があります。指導できる人材がそろっていても業務に追われ、人材育成にかける時間がないのです。
技術の継承を実現するためには、企業が人材育成にかける時間を十分に担保する必要があります。そこで、指導者が日々の作業で手いっぱいとならないための業務改善が必須条件といえるでしょう。
業務の属人化が進んでいることも技術の継承が滞る理由の1つです。特定の技術者しか作業手順がわからない、長年勤務しているベテラン技術者しか対応できない業務があるなどの属人化した環境では、技術を継承しにくくなります。作業内容に関係なく、担当者やベテラン技術者が不在の状態でも生産できる体制に整えておくことが大切です。現場をよく理解しているベテラン技術者だけでなく、企業の今後を担う若手社員も同じ業務が遂行できるよう指導していきましょう。
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技術の継承が進まない理由には、既存マニュアルを活用できていないことも挙げられます。技術を継承する手段として、次世代へと受け継ぎたい知識や技術をマニュアル化する方法は有効です。しかし、読むだけでは内容を理解しづらい、熟練技術者のコツや勘などが盛り込まれていないといった状態であれば意味がありません。
だれが読んでも理解できるようにまとめる、すぐに活用できる実践的な手段を記載する、動画にするなどの工夫を凝らすことにより、精度の高いマニュアルが完成します。
作成されていても活用していない現状があれば、一度既存マニュアルの内容を見直してみるといいかもしれません。
技術の継承問題には、大きく分けて2つの対策法があります。それぞれの方法について詳しく解説していきましょう。
作業の効率化を図ることにより、指導者と指導時間を確保できます。人手不足によって指導者も業務に手を取られている、指導にかける時間がないといった場合には有効な方法です。
作業の効率化は、以下のような方法で実現できます。
①生産ラインへの機械の導入
人の手で作業を進めていた生産ラインに機械やロボットを導入することで、業務の省人化が実現。省人化による各工程からの人員削減は、人手不足の解消につながるだけでなく、削減した人員を人材育成に充てることも可能にします。人手不足によって指導時間の確保が困難となっている場合には、生産ラインの設備を見直してみるといいかもしれません。
また、生産ラインに機械を導入することは製造技術の可視化や標準化にもつながります。これまで熟練技術者のコツや技に依存していた工程が、だれでもスムーズに理解できる工程へと変化し、熟練技術者への依存度が低減。従来よりも技術継承の問題が生じにくい環境となるでしょう。
②生産管理・設備保全システムの導入
紙やエクセルで管理している生産管理・設備保全業務は、それぞれの情報を一元管理できるシステムを導入することで効率化を図れます。これらのシステムは、紙への記載漏れやエクセルへの入力ミスなどの人的ミスの軽減につながるだけでなく、リアルタイムでの情報共有を実現。技術者が日々行う管理業務や点検作業、上層部やベテラン技術者が行う確認作業が円滑に進むことで、技術の継承にかける時間を設けやすくなるでしょう。
技術の継承問題を解消するためには、活用しやすいマニュアルを作成しておくことが大切です。マニュアルの作成により、指導者によって変わりがちな指導内容や教え方を統一できます。
マニュアルを作成する際に押さえておきたい4つのポイントをご紹介しましょう。
①暗黙知を形式知化する
「暗黙知」とは、仕事を重ねていくなかで身についたスキルや、個人の勘・経験に基づいたノウハウなどのことを指します。言語化しにくく、次世代に伝達しづらい点が大きな特徴です。
対して、「形式知」は文章や図表、計算式などで表現できる知識のこと。客観的にとらえやすく、作業時に活用すれば一定の結果を得られます。既存のマニュアルがうまく機能していないケースでは、前述した暗黙知が形式知化されていないことが原因の1つとして考えられるでしょう。
暗黙知は、暗黙知を持つ者同士で共同作業を行い、互いの暗黙知を共有することで形式知化しやすくなります。共有時に発見した気付きは、文章や図面に書き起こして既存の形式知と組み合わせましょう。暗黙知を含めて形式知化したマニュアルは、実践で活用しやすいバイブルとなるのです。
②ノウハウを「技術」と「技能」に分解する
熟練技術者から集めたノウハウは「技術」と「技能」に分けて考えます。パターン化している作業は「技術」に分類され、形式知化しやすい業務です。そこで、熟練技術者が持っているノウハウのなかでも過去の経験に当てはめて進めている技術を形式知化してマニュアルに落とし込みます。資料として提示することで、自主学習が可能に。指導者の不在時の資料としても活用できるでしょう。
一方で技能は、実際に体験することで得られる可能性が高まります。暗黙知をできるだけ形式知化したら、熟練技術者による実践的な指導を行うことが大切です。そのほかにも、実際に作業する様子をオンラインで共有するといった方法は技能習得への近道となるでしょう。
③実演動画を作成する
学習用の資料として、作業の実演動画を配布することも技術・技能の継承に有効です。特に、言葉や図表で表現しにくい技能や暗黙知は、視覚でとらえたほうがスムーズに理解しやすくなります。熟練技術者が実際に作業しているときのスピード感や目線などを伝えたい場合には、動画マニュアルを作成してみるといいでしょう。
マニュアルの動画化により、習得するまでに時間がかかる技能をタブレット端末やスマートフォンからいつでも閲覧できるようになります。自主学習用の資料としてだけでなく、現場で作業のコツをつかみたいときの参考資料としても効果を発揮するでしょう。
万全な教育体制を確立するためには、生産ラインや管理業務だけでなく、マニュアルにも積極的にデジタル技術を活用することがおすすめです。
④熟練技術者と若手社員のコミュニケーションを強化する
熟練技術者と若手社員のコミュニケーションを強化することも活用しやすいマニュアル作成に欠かせないポイントです。熟練技術者の話を直接聞く機会が増えることで、熟練技術者が気に留めていなかった点に気付ける可能性があります。また、不明点を聞きやすくなるので技術の継承を行う際には、指導者と若手社員が共同で作業できる機会を増やしましょう。そうすることで、若手社員が学びやすい環境が整い、技術力が向上するはずです。
新たに発見した感覚やコツは、暗黙知となる前にマニュアルに記載する、動画に残すなどの方法で視覚化します。マニュアルは随時更新し続けることで、価値が高まるでしょう。
「技術の継承」の概要と製造業において技術の継承がうまくいかない理由、技術の継承問題への対策法について詳しく解説しました。経験を重ねることで習得できる技能や一部の技術者のみが理解している暗黙知の内容は、熟練技術者のなかだけでなく若手社員ともコミュニケーションを深めて共有することでマニュアル化しやすくなります。生産ラインや管理業務、マニュアルにデジタル技術を有効活用し、効率のよい教育体制を確立しましょう。
執筆者
MENTENA編集部
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